松尾大社の神幸祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。(2) 船渡御
松尾大社の神幸祭、続きです。
松尾の祭には、必ず雨が降るそうです。
それは、松尾の神様が水の神であることに由来するんだとか。
松尾大社の祭神は、松尾山を支配する神・大山昨神と、海上守護の神・中津島姫命の二柱。
海の無い京都に海の神さまが祀られてるのを不思議に思われるかも知れませんが、
松尾の目の前には、淀川を経て瀬戸内航路に直結する桂川が流れてます。
また、桂川上流である保津川を経由して、丹波から木材などの交易を行っていたことは有名です。
この地で水運、あるいは漁などで「水」に関わってた人たちは、多かったんでしょう。
松尾の氏子にとって、水と船は、今よりもはるかに大きな意味を持ってたんじゃないでしょうか。
そんなことを考えさせてくれるのが、松尾祭・神幸祭の最大の見せ場である、船渡御。
文字通り、神輿を舟に乗せ桂川を渡ってしまうという、京都で唯一無二の勇壮な荒技です。
もっとも、さらに昔は舟さえ使わず肩で担いで川を渡りきったそうですが、
いずれにせよ人と水とのダイナミックな係わり合いが見れる神事です。
今日は朝から、日本晴れ。午前中は、暑いくらいの陽気でした。雨なんか降るんでしょうか。
12時半、トップバッターである月読社の船渡御を前にして、大雨であります。
というか、ヒョウらしきまで降ってます。見物客は阿鼻叫喚状態となり、桂大橋の下へ避難。
松尾の神、恐るべし。斎竹+注連縄が、雨に濡れながら神輿を待ってます。
豪雨が収まった13時頃、6社に先行して月読社が神輿なしで渡御を行います。
船渡御が行われるのは、桂大橋の上流側。
真っ直ぐ川を渡るというより、若干流れながら対岸へ向かう感じでしょうか。
無事対岸へ着岸し、石櫃運んで巡幸する月読社。この社はもともと、神輿なし。
太古の昔は神輿を持ってたそうですが、渡御の途中に川に流されて以来、今の形になったそうです。
月読社の渡御を見届けてから、堤防の上で待ち構えていた四之社の神輿が、川原へ突入。
スロープを担いで降り、川原にてしこたま差し上げ。で、そのままの勢いで、ザバーっと進水。
神輿自体は水につけることなし。水と神輿の間に神船が滑り込み、その上に神輿が乗せられます。
神輿を神船に乗せた駕輿丁たちは、神船とは別の駕輿丁船に分乗して、対岸へ先行します。
橋の下へ避難してた見物客も、岸へ。橋の上も、人でいっぱいです。
三宮社の渡御のあたりから、豪雨+ヒョウの悪天候から一転して見事な晴空が広がり始めました。
ビニールをかぶることなく、スッピンで堂々たる姿を見せ付けています。
対岸に先行した駕輿丁は、休む間もなく神輿の受け入れ態勢に入り、着岸を見守ります。
昔は普通に橋を渡ってたそうですが、より古式に近づける意図で船にしたんでしょうか。
神船に先行するためか、駕輿丁船はエンジンをふかしまくって高速で水上を走ります。
駕輿丁船は2隻あったと思うんですが、大人数の駕輿丁を一度に運びきれないのか、
シャトル船のごとく両岸を往復してました。
駕輿丁船が高速でぶっとばすのに対し、神船は手こぎ。ゆっくりと水面を進んでいきます。
後の鉄橋で桂川を渡ってるのは、阪急電車。ここからだと、桂駅が最寄駅です。
宗像社の神輿。神船の手こぎは、保津川下りの船頭さんが奉仕してるそうです。
進水の時は実にワイルドな船渡御ですが、水面上の姿は実におおらかで心なごむビジュアルです。
桂大橋の上から見た、駕輿丁船と、対岸へ先行して神輿を待つ宗像社の駕輿丁。
駕輿丁たちは、神船が着岸する前からドボドボと川の中へ突っ込んで迎えに行きます。
突っ込まないと神輿を持ち上げようがないからですが、
桂川の水を浴びてお清めとする意味もあるとか。で、船から神輿を担ぎ上げ、上陸です。
橋の上から見たら、乗ってる人がテンパってるのがよくわかる駕輿丁船。
走ってる間も、日の丸扇を振って景気づけることを忘れません。
別の角度で、上陸。櫟谷社の神輿です。
もちろん現場では「せーのー、よいしょ、ちょちょ、ちょお待てっ」みたいな怒号が響きまくってます。
ドロドロの川の底で足踏ん張って神輿を持ち上げるわけですからね。ほとんど、恐怖です。
神船から上がった神輿は、橋の下流側にある河原斎場へ向かいます。
目の前の桂大橋の下を、くぐっていくわけです。
で、神輿が下を通過する間、桂大橋は通行が遮断されます。
安全上の配慮などではありません。神の上を人が通るのは、恐れ多いからです。マジです。
ここのみならず、巡幸中に通る歩道橋でも同様の規制が行われるとか。松尾の神、恐るべし。
河原斎場。船渡御はとりあえずここが、ゴール地点みたいなもの。
各社はここで一旦神輿を置いて、全社が揃い、神饌を献上する祭典が始まるのを待ちます。
ここから祭典&御旅所へ出発するまでの間は、いわば休憩+燃料補給タイム。
各社ごとにテントが設けられ、舁き手やその家族がくつろいでます。
上空では、京都市消防局のヘリが巡回。
人間・神・自然、いずれもがワイルドに躍動するダイナミックな神事でありました。
しかし、祭りはまだ終わりません。というか、下手するとここからが、本番なのです。
ここでの客層は、本社でのそれから単独女性を引いて、地元+身内をさらに増やした感じ。
ダイナミックで派手なことやってるのに、知らない地域の地蔵盆に紛れ込んだ気分とでもいうか。
アウェイといえばアウェイですが、和むといえば実に和める雰囲気です。
松尾大社 神幸祭(3)へ続く
松尾大社の神幸祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。 (1) 発御祭
松尾大社の神幸祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。 (2) 船渡御
松尾大社の神幸祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。 (3) 七条通巡幸
松尾大社の還幸祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。 (2014) 【前篇】
松尾大社の還幸祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。 (2014) 【後篇】
松尾大社 松尾祭 / 神幸祭 船渡御
4月20日以後の第一日曜日 12:30~
会場 ・ 桂大橋上流側
京都府京都市西京区桂御園
阪急京都線 桂駅下車 徒歩20分
京都市バス・京阪バス 桂離宮前下車 徒歩5分
Wikipedia 松尾大社