葵祭・路頭の儀を追尾してみました。もちろん、ひとりで。 (1)

2011年5月15日(日)

御所の斎王代
葵祭・路頭の儀をフルで追尾してみました。もちろん、ひとりで。

葵祭。言うまでもなく、京都三大祭のひとつです。
夏の祇園祭、秋の時代祭と並んで、春の京都の重要な観光資源でございます。
本名、賀茂祭。上賀茂神社と下鴨神社、両賀茂社の例祭であり、
私の地元の石清水祭・奈良の春日祭と共に、勅使が派遣される三大勅祭のひとつでもあります。
そもそも京に於いて「祭」といえばこの賀茂祭のみを指したくらい、その重要性は高く、歴史も長し。
平安遷都以前から「猪殺して乱闘しまくり」の喧嘩祭として、何度も禁制食らうほどの大盛り上がり。
遷都以降は賀茂社の王城鎮護指定を受け、勅祭化。また都の祭として、洗練化。
特に、御所から社までを天皇の使い・勅使とその行列が華麗な姿で行進する路頭の儀は、
雅な姿がさながらファッションショーの如き人気を呼び、見物人の場所取りで諍いが起こるほどに。
以後、応仁の乱でしばらく途絶したり、明治維新や第二次大戦などによる中断を挟みつつも、
そのたびに何とか復興、戦後は斎王代も導入し、一貫して京の「祭」であり続けてます。
流鏑馬神事・歩射神事・競馬会神事・御阿礼神事・そして御影祭などなど、
単体でも集客力のある神事が並ぶ葵祭ですが、一番の客寄せパンダはもちろん、この路頭の儀。
新緑眩しい都大路に華麗なる王朝絵巻を再現する、全長1キロもの日雇いバイトのコスプレ行列。
しかし着ている衣装は全部本物、下手すると着てる人間より高価だったりするので、あなどれません。
そんな路頭の儀、スタートの御所からゴールの上賀茂神社までは実に8kmに及びますが、
最初から最後まで、徒歩のみで追いかけてみました。何故って、暇だし・・・。

午前9時の建礼門前
午前9時の京都御所・建礼門前。行列すなわち行粧は、ここから出発します。
場所取りのカメラマンは既にウジャウジャいますが、有料観覧席を含め、人はまださほどいません。
売店をうろついて御所せんべいを買い食いしたり、何故か露店が出てた稚児餅も買い食いしたり
駐車場のナンバーを何となく見たりしながら、スタート待ち。ちなみに車は9割が府外。

開始目前の建礼門前
で、開始目前になった建礼門前。ご覧の通りの有様です。
言うまでもない大混雑なんですが、何というか、体感混雑度みたいなのは案外大したことありません。
御所は広いですから、逃げようと思えばいくらでも逃げ場があります。

山城使
行列は定刻通り、10時半にスタート。
5月5日の賀茂競馬で選ばれた先導役・乗尻に導かれ、警護を担当する検非違使、
続いて両賀茂社が洛外&山城国の管轄区域ゆえ督護の任につく山城使が登場。
いずれも大量の舎人・白丁などのバイトさんを従えています。親玉もバイトかも知れませんが・・・。
あ、左奥の何とも言えない形の傘、山城使の管蓋です。

近衛使代
御幣櫃と衛士、御所車の名を持つ牛車などに続いて現われる、勅使。別名、近衛使代。
近衛中将 or 少将が勅使を勤めたことで近衛使の名が生まれ、その代理ということで、近衛使代。
現代の勅使 = 天皇家より内廷費で雇用されている掌典は、社頭の儀のみ参加。
といっても、こちらの近衛使代も旧公家の後裔の方が担当されてますが。当然、行列中で最高位。
勅使の前後も、旧公家・両賀茂両神社の社家・宮内庁の人々が奉仕されてるそうです。

陪従
近衛使代の後、随身・牽馬・風流傘をはさんでついて来た、陪従。頭の葵の葉が、目立ちます。
葵をつけてるから葵祭なんですが、この呼び名が定着したのは案外遅くて、江戸時代以降。
家紋と同じ葵を大々的にフィーチャアしてるのを喜んだ徳川幕府が、資金援助するようになってから。
馬は結構、よそ見したりします。

風流傘
陪従と内蔵使に続いて、風流傘その2が登場。前の方にいるその1とは、花の色が違います。
風流傘その2は、御幣櫃と勅使をメインとした本列の、最後尾。後にいるのは、斎王代列。
そういえば御所のパレード中、延々と西陣の偉いさんの説明 or 自慢 or 愚痴が響いてました。
いかに凄いか、いかに大変か、いかにもう死にそうか、みたいな。

駒女
斎王代列は、トップ画像で腰輿にかつがれてる斎王をメインとして、
命婦・女嬬・駒女・蔵人所陪従・牛車が付き従います。写真は神事を司る役を持つ騎馬姿の駒女。
浮かれるカップル、親子連れ、単独、変な奴など、あらゆる層がグチャグチャに混じった烏合客が、
この辺から一気に盛り上がり、女人列に釘付けとなってます。

女房車
斎王代列の後尾につく、女房車と呼ばれる牛車。
本列にも御所車なる牛車がありますが、葵と桂に加えて桜と橘の飾りがつくのが違うそうです。
御所の客は、烏合とはいえやっぱり中高年に寄った感じでしょうか。老人より、中年が多し。
見物に体力がいるからでしょうね。私もこの時点で、既に相当くたびれてます。

花傘
建礼門前からまっすぐギャラリーの前を南下した行列は、堺町御門から御所を出ます。
カメラマンがふき溜まるカーブから門の前後のあたりの混雑、エグいです。
御所内は、人間の数も無茶苦茶に多いですが、敷地も無茶苦茶に広いため、移動は極めて楽。
最前列でなければ人圧はかわせるし、記念写真くらいなら芝生でくつろぎながらでも撮れますが、
ここはなかなかに、地獄。そんな地獄を知らん顔でスルーする命婦、そして花傘。

蔵人所陪従
門よりもさらに混雑がエグいのが、丸太町通と河原町通。人の数というより、狭さがエグし。
交通規制は片側のみ+歩行者天国にあらず+横断もあまり出来ない。動けません。
京都の歩道は狭いところが多いですが、御所の周囲は極めつけに狭いので、密集率も高し。
写真は、たまたま横断できた河原町通で撮った蔵人所陪従の後姿。

斎王列
河原町通にリアル王朝絵巻を展開する、女人列と花傘、そして府立医大の木。
雅この上ないですが、隣の寺町通では行列に先回りしようとする観光客の競歩大会、開催中。
見た目がこんな行列ですが、進行速度、案外速いです。走らないと、先頭に追いつくのも困難。

駒女
閉校の憂き目となったバイオなんちゃら = 関西文理学園に、諸行無常の響きを聞く、駒女。
北上して景観がフツーになり、駅などから離れたところになると、客の数は若干減少。
代わって、近所風の人達が増加。「今年は人多いなあ」とか言いながら、ちょっと見て帰る、みたいな。

斎王代
斎王代でございます。
今年のヒロインは、同志社大4年の方。もちろん、どっかの社長の娘さんでございます。
涼しげな笑みを浮かべてらっしゃいますが、着ている衣装は30kgもあるんだそうです。
で、ず~っと笑みを浮かべるわけです。常時誰かに撮られてるので、息も抜けないのです。地獄です。

出町橋上の王列
出町橋を渡る斎王列の花傘。下鴨神社まではもうすぐです。
路上の観光客の客筋は、中の下という感じでしょうか。タダで観れるものに群がる人たち、みたいな。
震災以来、中国人団体の姿を久し振りに見た気がします。特にこの辺、よく見かけたような。

出町近辺
改めて混みまくり、歩きにくくなった出町近辺。行列は、糺の森へ入ってしまいました。
行列は、下鴨神社で路頭の儀を一旦中座、社頭の儀に入ります。
勅使の祝詞奏上、御幣物奉納、東遊舞奉納、走馬の儀奉納と、本当の意味で雅な神事が目白押し。
正にこの祭のコアなのであります。見たいのであります。でももう、大混雑なのであります。

下鴨神社
で、下鴨神社。混んでる以前にゲートは完全通行止めなので、中にも入れないのであります。
まあ最初から見れないと覚悟してたので別にいいんですが、
有料席の前売券を買った人は、チケットあるからと安心せず早めに中へ入った方がいいですよ。
周辺の道では、木の間から行列を見ようとする沢山の人達が、塀にへばりついてました。

ヤマモトのビザトースト
とりあえず腹減ったので、飯を食いに行きました。が、店少ないし、どこも人、多し。
みたらし団子屋も当然、行列。さほど美味くもなさそうなラーメン屋にまで、行列。
結局、コーヒーショップヤマモト下鴨店まで歩き、ビザトーストのランチセット880円也を食らいました。
お洒落な店内で全身から塩吹きながら頂いたコーヒーはウマー、ビザトーストはフツー。

2011-05-15 葵祭 路頭の儀 (2) へ続く

牛車を寝ながら見る人
京都御所
京都府京都市上京区京都御苑
市営地下鉄烏丸線 今出川駅下車 徒歩5分
京都市バス 烏丸今出川下車 徒歩5分

公式 宮内庁参観案内:施設情報:京都御所
Wikipedia 京都御所

下鴨神社
京都市左京区下鴨泉川町
京阪電車&叡山電鉄 出町柳駅下車 徒歩12分
京都市バス 下鴨神社前 下車5分

下鴨神社 公式 世界遺産 下鴨神社
Wikipedia 賀茂御祖神社

葵祭 公式 葵祭
Wikipedia 葵祭