妙蓮寺宿坊で聖夜を過ごしました。もちろん、ひとりで。【前編】

2011年12月25日(日)


妙蓮寺宿坊で聖夜を過ごしました。もちろん、ひとりで。

メリー・クリスマス!!!
今年もまた、聖夜の季節がやってまいりました。独男にとって、鬼門の季節が。
前年は宿泊料1500円+エアコンなし激寒+プレハブ状態の安宿・いずみハウスに泊まり
末期のアナログテレビで明石家サンタ見ながら一人でシャンパンラッパ飲みなどしたわけですが、
今年はもっと上質な 『クリスマスひとりお泊り in 京都』 を提案したいと思います。
私だって、いい加減大人ですからね。くだらないことばかり、そうそうやってられませんよ。
というわけで、2011年の聖夜に泊まったのは、妙蓮寺
正真正銘、お寺です。しばらく前からブームになってるという、宿坊というやつです。
ただ泊まるだけでなく、朝のお勤めなどにも参加できたりするのが魅力の、宿坊。
また、一般の宿に比べると料金が安価に設定されているのも、人気の要因となっています。
ちなみにこちらの妙蓮寺、一泊、3800円。相応しい表現かは知りませんが、「お値打ち」です。
加えて妙蓮寺が魅力的なのは、その立地。すなわち、上京・西陣・寺之内。
寺之内」の名が示す通り、周囲には法華宗を中心に本山クラスの寺院が林立しまくり、
ゆえに茶道の各千家が集中しまくり、ゆえに和菓子の老舗が密集しまくってるエリアなのであります。
「そんな高級な世界のことは知らん」という方でも、街並の中をただ歩いてるだけで、
偏頭痛が起きるような京都独自の異常な閉塞感をとことん堪能できるエリアなのであります。
そんな宿坊、独男の上質な聖夜にはふさわしい、と考えたのは大嘘ですが、
とりあえず行くところがないので、純粋なる興味本位&面白半分で泊まってみました。
密集しまくる和菓子屋の老舗の中には「クリスマス和菓子」なんてのを出してるとこもあるので、
そっち方面でもちょっと、遊んでみましたよ。


妙蓮寺、宿坊の予約は電話とFAXで行います。
まず電話で空室の確認を取り、確認のFAXを送信するという流れ。
ネット予約とか、ありません。メールも駄目です。飛び込みも、多分無理でしょう。
電話に出てきたおばちゃんは、吉田さらさ宿坊本に出てきた、あのおばちゃんでしょうか。


で、イブ当日の17時ジャストにやってきた、妙蓮寺。
本門法華宗の、大本山。元は下京にありましたが、秀吉の京都大改造で現在地へ。
京都は法華宗パワーが強く、おかげで幕府に弾圧されたり叡山に焼き討ちされたりしてますが、
妙蓮寺もまた寺を集めた寺之内へ強制移転、御所から拝領した山門は今も寺之内通に面してます。


山門もかなりデカいですが、中もまた結構、広し。
本堂や書院に加え、子院が八つも建ち並び、とても街中の寺とは思えません。
工事中の本堂や鐘楼、そして子院の前の参道を通り、宿坊受付の表書院へ。


中へ入ると誰もいないので、呼び出し用小鐘を叩き、しばし待ちます。
玄関には、禁門の変の際に薩摩藩がつけた刀傷あり。長州の敗残兵を追っかけてきたんだとか。
外には新撰組による刀傷もあり。こちらは追討でも何でもなく、薩長同盟への腹いせとか。
と、刀傷に思いを巡らせてると、予約の時のおばちゃんではなく、普通の兄ちゃんが現れました。


兄ちゃんの案内で、中庭を横目で眺めながら2階の参籠へ通されます。
寒い。吹きさらしなので当然ですが、寒い。そういえば、玄関には貸し出し靴下があったような。
あ、玄関には他にも観光本やグッズ販売、自由に使えるPC、ウォータークーラーなどがありました。


参籠でございます。といっても、8畳の普通の部屋。
あるのは布団とテーブルだけ。なので、すごく広く感じます。あ、お茶セットはちゃんとありますよ。
隣の部屋とは、襖で仕切られてるだけ。無人なので開けてみると、本当に簡単に開きました。
ちなみに鍵、ありません。女性の宿泊客には、部屋の配置を考慮されるそうです。


会計を先に済まそうと4000円渡すと、兄ちゃんは釣りを取りに、下へ。
しばらくして釣りを持ってきたのは、妙齢女性。やはり件のおばちゃんとは別人かと。
妙齢女性がおっしゃるには、門限は21時。それまでは、出入り自由。基本、完全放置路線。


妙蓮寺オリジナルの茶碗で、とりあえずお茶を。
茶碗、「妙蓮寺」の文字と菊紋が入ってます。「妙」だけ書かれてるわけではありません。
それにしても、寒い。エアコン完備でフル稼働させてもらってますが、それでも強烈に、寒い。


部屋の窓を開けると、そこは墓地。
赤穂義士遺髪墓があり、昔は忠臣蔵を演じる歌舞伎役者が参拝に来たとか。
「メリー・クリスマス」と挨拶し、お湯が出ない洗面所で顔を洗ってから、外出です。
部屋が寒いんだから、廊下も激寒。歩くと足の裏が勝手に跳躍し、音を出すこと、甚だし。


外出前、妙齢女性に朝のお勤めをお願いしました。
宿坊ならではの、朝のお勤め。妙蓮寺では、希望制。もちろん、参加させてもらいます。
妙齢女性いわく、6時25分頃に玄関前へ来いと。無茶苦茶寒いから、厚着で来いと。
夕方の今でこの寒さなら、早朝は一体どんなことになるんでしょうか。


で、外へ。とりあえず堀川今出川へ出たの図。
妙蓮寺は堀川通に隣接してるので、コンビニやスーパーには不自由しません。
クリスマスケーキの消化に焦る店頭販売の声を聞きながら、さてどこで何食べよかな、と。
左は、夕方にクリスマス和菓子を買った鶴屋吉信本店。右は、式神が番をしている夜の晴明神社


何となく智恵光院通へ流れてきたの図。
左は、旅行安全の神様・首途八幡宮。ショート過ぎるトリップの無事を祈願しておきます。
右は、その首途八幡宮の境内を侵食するように聳え立つ、古本市場西陣店
テレビさえない宿坊での夜のお伴に、阿呆な本を仕入れおくのも悪くないかもしれません。


きゅっきゅっと曲がりながら鞍馬口通まで上り、
満員のスガマチ食堂や普段通りの船岡温泉を眺めてから、勢いで権勲神社にも参拝の図。
暗黒の中、破壊神・信長に聖夜と聖夜に浮つく輩どもの破壊を祈願しておきます。
「もっとダークに」「もっと暗黒に」という方は、櫟谷七野神社へどうぞ。私は怖いから、行きません。


実は夕食の腹案として「船岡温泉→ラーメン太七」の線を考えてました。
味も体裁も渋過ぎるラーメン店・太七。独男の聖夜には、うってつけと。しかし、あいにく定休。
振られて彷徨ううちに千本通へ着き、勢いでタンタシオンダンジュでケーキを買うの図。
ケース片手に一人で写真撮ってると、隣のフレスコの店先でケーキ売ってた女の子に笑われました。


あかん、ケーキ買うてもうたから、いっぺん寺へ帰らんといかん。
というかその前に、銭湯にタダで入れるチケットをもらって来るの、忘れてた。
いや、それより何より、もう8時や。門限9時やから、さっさとせんと風呂も飯も済ませられへん。
というわけで、独男がケーキを持って駆け抜ける、イヴ20時の大宮寺之内。


で、一旦寺へ帰ってきたの図。
共用冷蔵庫へケーキを仕舞い、風呂の支度をします。といっても、券をもらうだけですが。
玄関には洗面器が置いてあり、そこに銭湯チケットもセッティング。タオル類は、一切、自前。
イヴの客など俺だけだろうと思ってたら、他にも数寄者がいるみたいですね。


まず、飯。以前から気になっていたうどん屋 『助六』 へ。
一見、そこら中にある町家ショップですが、TV出演の写真を店先へ張りまくるあたり、妖しいなと。
実際は、うどん屋歴40年のおっちゃんが実家を改装し、ゲストハウス兼業でやってる店。
何故か津軽じょんがらを聞きながら、丹波黒豆を混ぜた麺の野菜天うどんを食す。次は、風呂。


妙蓮寺の近所の銭湯は、遠い順に船岡温泉・明治湯大宮温泉
船岡温泉は、行ってる時間がない。大宮温泉はちょっと、近代的過ぎ。というわけで、明治湯へ。
浄福寺通を慌てて歩き、童謡を流してる番台のおばちゃんにチケット渡し、サッと入浴。
帰ったら、狂乱のひとりクリスマス和菓子パーティー、始めます。
 
妙蓮寺宿坊で聖夜を過ごしました。もちろん、ひとりで。【後編】へ。