園部のくりや本店とかどや老舗に栗餅を買いに行きました。もちろん、ひとりで。

2013年10月7日(月)


園部のくりや本店とかどや老舗に栗餅を買いに行きました。もちろん、ひとりで。

京都の秋の味覚といえば、丹波栗
和菓子店はもとより、洋菓子店や料理店でも秋となれば、その名を見かけます。
丹波の地より運ばれてきた山の味覚に、京童は秋の到来を感じ、心を躍らせるというわけです。
が、私は丹波栗と聞いても、特に心が踊りません。何故なら、私の本籍地は丹波だから。
父の実家は家庭の事情で私の生まれる前に地上から消滅しましたが、母の実家はまだ健在で、
長じて孤立を深めるようになる以前は、私も普通に、丹波の旧家をたびたび訪れてました。
敷地内には何本か栗の木が生えていて、秋に訪れた際にはその栗の木へ蹴りを入れ、
「痛い痛い痛い」 とか言いながら落ちてきた栗を拾い、「痛い痛い痛い」 とか言いながら針皮を剥き、
生のまま食おうとしては 「固い、食えへん」 と、何度も何度もその辺に捨ててたものです。
もちろん、おやつにはちゃんと茹でた栗を出してもらえたわけですが、それも私は嫌いでした。
何故なら、茹でられてもなお、皮を剥くのが、面倒くさいから。パクッとすぐ、食えないから。
「痛い」 「固い」 「面倒くさい」 。これが、私の抱く丹波栗の原風景ということになります。
自分で書いてても 「死ねよ」 とか思いますが、そんなわけで、丹波栗と聞いても心は躍りません。
が、このサイトの趣旨は、ベタの単独正面突破。栗も一応、押さえておくべきでしょう。
京都で栗といえば、丸太町の 「くりや」 が、定期的に京都新聞へ広告を出したりしてますが、
あそこで栗菓子各種を買って食うだけでは、ちょっと楽過ぎるというか、ネタにならん。
なので、くりやの本店があり、父の故郷&私の本籍地でもある園部へ行ってみることにしました。
栗の産地である園部では、くりや園部本店&400年続くという超老舗のかどや老舗の両店が、
栗の収穫期だけ栗餅を販売するというので、それを買いに行ってみようじゃないか、と。
プレミアな栗餅、城、生身の神社、そして何故か味噌とんかつも登場する、
栗に導かれた錯乱する魂の遡行、お付き合い下さい。


園部へ向かうべくやって来た、京都駅、山陰線 aka 嵯峨野線ホーム。
京都府南丹市園部町。かつては単なる園部町でしたが、合併で南丹市の一部となりました。
あ、園部の位置は御理解いただいてるでしょうか。京都の北西にあり、亀岡市のさらに向こうです。
鉄道アクセスは、このJRのみ。とはいえ、近年は複線化などで、利便性がかなり向上してます。


利便性が向上し過ぎた電車は、嵯峨嵐山を過ぎると、トンネルばっかで保津峡越え。
しかし時折、保津川が見えないこともありません。運が良ければ、保津川下りの船も見えます。
トロッコ列車は、この山陰線の旧線跡。新線と違い、景色が実に良かったので、観光に活用したと。
台風のためか、水、若干濁り気味。保津川下りは再開してますが、今年のは大変みたいです。


快速電車に45分ほど揺られたのち、到着した園部駅
実は私、電車で来るの、初めてです。初めて降りた、本籍地の中心駅。感想は、何か、普通。
これは新しい西口で、バスターミナルもあり、人も多め。反対の東口は、ローカル駅の風情が強め。
あ、園部駅といえば栗飯と鮎飯の駅弁が有名ですが、予約制なのか、売店販売は見かけず。


東口を出て、その駅弁調製元・淡路屋がある通を見てみたの図。
淡路屋、昼は食堂営業してるそうですが、それも終わってました。あ、手前の食堂は、別の食堂。
それにしても、渋い。あまりにも、渋い。他にも、とんでもないナチュラルレトロな旅館の姿など散見。
一方、開発も進んでるのか、写真奥に写る通り、普通のビルやマンションも結構、建ってます。


くりやがあるのは、駅の北西。なので、そっちへ向かうR9の歩道を歩行開始。
しかし、すぐに歩道は、消滅。狭い道を爆走する車が恐いので、園部川沿いの道を歩くの図。
園部川は、もうちょっと下流で大堰川 aka 保津川 aka 桂川と合流する川。流れは実に、穏やか。
途中、野猿のようなものを見かけました。見た感じ、現役稼動してるっぽいです。渋い。


当たり前のことだと思い、書くのを忘れてましたが、園部は城下町です。
江戸時代に園部城築城&周囲に城下町が誕生し、その面影は町のあちこちに残ってます。
が、実際に歩くと、かなり荒っぽい道路拡張で景観が失われてることの方が、印象的だったりして。
それにしても、栗の看板類を見かけません。そこら中が栗推しのイメージを抱いてたんですが。


で、結局30分近く歩いて、やっと到着した、くりや本店。外観、立派。
この地に創業してから、実に150年。丸太町の店は、明治後半に暖簾わけしたんだとか。
くりやといえば、何といっても 「栗納豆 金の実」 。ですが、季節の生菓子も扱ってて、秋は栗餅、と。
当然ながら、大人気。売り切れの可能性も、大。果たして、ちゃんと購入できるでしょうか。


栗餅、買えました。普通に売ってたのを、普通に買えました。
店員女性に怪訝な目で見られながら、カウンターに並ぶ美しい栗餅に 「おお」 と、しばし感動。
で、1個168円×3個購入。まるで街の洋菓子店みたいな包み紙が、妙なネイティブ感をソソります。
原材料名には、栗と共にやはり丹波名物の小豆 「丹波大納言」 の文字。味、期待できそうです。


くりやの栗餅がゲットできたので、その勢いで、徒歩約1分のかどや老舗へ。
元・園部藩御用菓子司、創業400年を超える超老舗です。悪いけど、全くそう見えませんが。
名物は、初代がのちの園部藩主・小出氏に従って出兵した文禄の役に由来があるという、 「唐板」 。
「栗納豆」 もまた、有名。で、栗餅は、期間限定。果たして、ちゃんと購入できるでしょうか。


栗餅、買えました。2パックしか残ってないうちのひとつを、買えました。
5個入パック、正価は、知らん。おっちゃんが 「栗の色が出てる」 と、400円にしてくれたので。
「鍋の端っこの方のやつが」 どうこうと言ってましたが、とりあえず普通に食えればいいので、購入。
包み紙は、最高に渋い。店の中は、最高にディープ。いろんな意味で、好き者は必訪です。


めでたく栗餅を手に入れることができました、と。で、どこで食おうかな、と。
家まで持ち帰ってもいいですが、何分、今日は暑い。10月ながら、30度を超えるほど、暑い。
ヤバそうです。特にかどやの方は、ヤバそうです。というわけで、園部城を拝める公園で食うことに。
城といっても、本物じゃないですけど。文化博物館の一部として作られた、レプリカであります。


公園の休憩スポットみたいなところに座り、まずはくりやの栗餅を、御開帳。
近くで遊ぶ親子連れの目も気にせず、不審者全開の呈で、餅を舐めるように撮ってみました。
味の方は、王道という感じでしょうか。上品な餅で丹波大納言の餡子を包み、その奥には大粒の栗。
栗はもちろん、レア&ナチュラル。変な味つけや、安っぽい食感は一切なし。実に、栗です。


せっかくなので、栗餅と城の2ショットも押さえておきましょう。
近くで遊ぶ親子連れの目も気にせず、不審者全開で、餅と城を舐めるように撮ってみました。
餅全体の作りもまた、実に丁寧。栗のナチュラルさも、野趣として前面へ押し出ることはありません。
美味しいので外で食うのが惜しくなり、2つは家へ持って帰ることにしました。もってくれ、餅。


続いては、かどやの栗餅です。こちらもまずは、城との2ショット。
近くで遊ぶ親子連れの目も気にせず、不審者全開で、餅と城を舐めるように撮ってみました。
おっちゃんは、やたら栗の黄色が出てるのを申し訳なさそうにしてましたが、確かに色、よく見えます。
しかし逆に、栗餅だということははっきりわかって、妙に美味そうな感じがしなくもありません。


で、かどやの方も、実食。ちょっと割って、中の栗を見てみました。
こちらもまた、栗のテイストは実に、栗そのまま。食感・味とも、極めてナチュラルに、栗です。
加えて独特なのが、餡子。栗餅のイメージにない、少し酸味があって、どこかフルーティな味わい。
どんな味が気になる方は、是非園部まで出向いて確かめてみましょう。で、5個を一気に完食。


栗餅6個を食い、ちょっと腹が膨れたので、城の周囲をしばし散策。
園部城、本物の城郭も若干残ってて、こちらの園部高校は櫓門を校門として現役使用中。
因みにここ、私の両親の母校であります。ここで二人は出会い、結果、私が生まれたのであります。
その私は、今、栗餅を食うためだけに、この地を訪れてるのであります。何やってるんだ・・・。


己の存在に根源的懐疑を抱いたため、神に助けを求めたくなったのか、
気がついたら、さっきの校門から300mほどの所にある、生身天満宮の前に立ってました。
生身は 「なまみ」 と読むのではありません。「いきみ」 と読みます。大して変わらん気もしますが。
菅原道真が存命中にこの地を訪れたので、生身天満宮、と。日本最古の天満宮だとか。


境内は、「鎮守」 「氏神」 「産土社」 という言葉がぴったり来るような雰囲気です。
実際に園部町の総氏神だそうで、もうすぐ行われる秋祭のチラシを、あちこちで見かけました。
いや、それは京都の都市部の神社も同じですが、ここには醒めた感じや荒んだ空気がないというか。
アニメや映画など映像でばかり見た、全国標準らしい 「村の鎮守」 テイストが強く感じられます。


「村の鎮守」 的なイメージに、私は距離を感じずにはいられません。
鎮護国家の神・石清水八幡宮の傍で育ったので、こういう素朴さから、何かちょっと、遠い。
それは、大神社が多い京都市内も変わらない気がします。美しいようで、何かが凄く、荒んでいる。
この写真のような気遣いはあっても、そこに宿る豊かさや美しさが、私達には何故か、ない。


と、懐疑から助けてもらおうとして、余計に懐疑に駆られたところで、神社を退社。
帰り際、絵馬殿みたいな所へ寄ると、明治・大正期の奉納物が多数あるので、拝見しときます。
写真は、松竹合名社新京極の明治座にて歌舞伎 『赤穂義士実談』 興行にあたり奉納したもの。
松竹合名社は、現在の松竹。明治座は、MOVIX京都。他にも、日露出征の写真など、あり。


生身天満宮を出て、ぼちぼち帰るかと思い、改めて寄った、城。
散々写真を撮ったので、文化博物館にも寄っとこうかと思いましたが、時間は既に、16時半。
閉館は、普通に17時。というか、一応玄関まで行ってみると、臨時休業中でした。どないやねん。
明治天皇が避難する案もあった、園部城。何か、面白いものが見れるかと思ったんですが。


で、帰ります。R9へ出て、今度は歩道消滅も恐れず、真っ直ぐ園部駅へ。
途中に寄ったAコープで、栗コーナーを見かけました。が、栗餅1パックを残して全て、売切れ。
やはり栗、強いみたいです。栗外郎、食いたかった。 「マロン交通」 なるタクシーも、乗りたかった。
写真はそれらと全く関係ない、Aコープからしばらく歩いた先にあった、 「そのべ」 の森文字。


「そのべ」 の森文字があるのは、園部駅のちょうど真正面。到着であります。
が、夕陽がいい感じになって来たので、もうしばらくウロウロと歩いてみることにしました。
だいぶ暮れた頃、太陽の向こうからやって来て、亀岡へ向け走り去る特急列車の姿、あり。美しい。
これまた、都心では味わえない類の美しさです。というか、この美しさって、一体何なんでしょう。


と、美についての深遠なる哲学的思考をしてると、腹が減りました。
なので、「れいん房」 へ。園部で外食といえば、「れいん房」 です。うちの実家では、そうです。
特に美味いわけでもなく、特に地の名物があるわけでもないですが、何故かそう決まってるのです。
よくわかりませんが、そうなのです。玄関の二宮像と同じくらい不可解ですが、そうなのです。


そして、「れいん房」 といえば、味噌とんかつに決まってるのです。
何故、園部で味噌とんかつなのかは、恐らく店側でさえわからんでしょうが、決まってるのです。
と、無茶苦茶書いてますが、味噌と肉を挟んで揚げたこの味噌とんかつ、実際には結構、いけます。
写真は、味噌とんかつ御膳、1480円也。高価い。でも、愛嬌は異常に、よろし。客も、多し。


本当に腹が膨れたので、今度は本当に帰ります。
帰宅タイムゆえ、狭い2車線を血走った車が爆走するR9をテクテク歩き、園部駅へ。
階段には、くりやの看板。「自然の風味が生きている!」 と。鉄道の匂いの残る絵が、たまりません。
絵の横には 「ポケットの 栗をいぢりつ 話しけり」 という句。これはこれで、何とも、たまりません。


で、帰宅。そして速やかに、くりや本店の栗餅を食します。
餅をゆっくりと割り、開き、奥に隠れていた栗を剥き出しにして、晒して、いぢってやりました。
味の印象は、変わりません。出来が良い栗餅です。たまにしか出ない栗おはぎも、食いたかったな。
不義理を通した丹波の親戚と復縁して、自家製の奴を作ってもらうか。いや、無理だろうな。

客層は、どうこういいようがないネタなので、パス。
とりあえず園部は、どこへ行っても基本的に人はあまり、いません。
せいぜい、れいん房が地元客で結構な賑わいを見せてたくらいでしょうか。
どこを好きに歩いていても、プレッシャー各種を感じることは、まずないでしょう。
また、不審者感やアウェー感が発生するほど超絶的な田舎という感じでもないので、
栗餅の写真を一人で撮ってても、多分通報されることはないはずです。

そんな園部の、栗餅と、城と、生身と、味噌とんかつ。
好きな人と行けば、より園部なんでしょう。
でも、ひとりで行っても、園部です。

くりや本店
京都府南丹市園部町宮町41-1
平日 8:00~19:00 日・祝日8:00~17:00
定休日 年中無休

JR山陰本線 園部駅下車 徒歩約21分
京阪京都交通バス or 西日本JRバス
園部大橋下車 徒歩約2分

くりや(元祖 栗納豆本家) – 公式
 
 
かどや老舗
京都府南丹市園部町上本町25
8:00~19:00

JR山陰本線 園部駅下車 徒歩約22分
京阪京都交通バス or 西日本JRバス
園部大橋下車 徒歩約1分

かどや老舗 角屋老舗 – 食べログ

園部公園
京都府南丹市園部町小桜町
入場自由

JR山陰本線 園部駅下車 徒歩約30分
 
 
生身天満宮
京都府南丹市園部町美園町1-67
拝観自由
JR山陰本線 園部駅下車 徒歩約12分

日本最古の生身天満宮 – 公式
 
 
レストランれいん房
京都府南丹市室河原中塚29
11:00~20:30
JR山陰本線 園部 or 吉冨駅下車 徒歩約12分

レストランれいん房 – 公式