鹿王院へ紅葉を観に行ってきました。もちろん、ひとりで。
こんなことを言うのはどうかなとも思いますが、はっきり言って、鹿王院は地味です。
権勢誇示が大好きな室町幕府三代将軍・足利義満が創建したにも関わらず、地味です。
やはり義満が創建した金閣寺の本名 「鹿苑寺」 と同じく 「鹿」 を冠するにも関わらず、地味です。
嵐山から徒歩移動も可能な距離にありながら、鹿王院の門前に観光の賑わいは、全然ありません。
門前町的な店や名物といったものも全然なく、せいぜい渋い銭湯・鹿王湯くらいしかありません。
塀でその存在を誇示することもなく、そもそも民家に完全包囲されてるため、誇示しようもありません。
「嵯峨の金閣」 とも称される舎利殿を始めとする見事な伽藍と、極めて格の高き由緒を持ちながら、
門前をスルーせずに済ませるのにも注意力が必要なこと請け合いの、実に地味な寺なのであります。
鹿王院。本名、覚雄山鹿王院。元々は、義満が創建した宝幢寺の開山塔として、造営されました。
宝幢寺は、 「宝幢菩薩を祀れば寿命が延びる」 という夢のお告げに従って、義満が建てた寺。
夢窓疎石の俗甥 or 義満のメンターである春屋妙葩 aka 天下僧録司 aka 普明国師を開山に迎え、
京都十刹第五の名刹としてその名を轟かせましたが、応仁の乱の後は衰退し、遂には完全消滅。
で、結局は妙葩が建てた鹿王院のみが残り、宝幢寺の寺籍を継ぐ形で現在まで存続してるわけです。
義満筆 「覚雄山」 の額を掲げる築600年の山門や、石畳の参道、嵐山を借景とする枯山水庭園、
さらには源実朝が宋国より招来したという仏牙舎利を安置する舎利殿と、鹿王院、見所は実に多し。
実際、訪れる客の数は、割と多かったりします。なのに存在感的には、凄く地味なのであります。
恐らくかつては、 「建てようと思った辺りに、鹿がうろついてたから」 という寺名の由来が示す通り、
嵯峨野的な鄙びた風情の中で 「嵯峨の金閣」 が屹立し、そのロイヤルな威容を誇ってたんでしょう。
しかし現代に入り、極めて右京区的な生活感溢れる宅地化により、周囲を完全包囲されたことで、
地味というか、独特のインパクトと存在感を持つ、妙味に満ちた寺になってる気がします。
そんな鹿王院、紅葉も名物。というわけで、地味さ&妙味さと共に堪能してきました。
鹿王院の最寄り駅は、嵐電・鹿王院駅。JR嵯峨嵐山駅からでも、徒歩10分程ですが。
嵐電で行ったら、嵐山行きは割と空いてました。と思ってたら、帷子ノ辻駅で大量に乗ってきました。
中国人団体が前の車輌へ行こうとして止められ乗降口に滞留してたので、その隙間から降りました。
直球な名前の鹿王院駅ですが、観光感はゼロ。観光案内の存在感を消すくらい、生活感過剰です。
あ、そもそも鹿王院駅、鹿王院参拝のために出来たのではないとか。あくまで生活用、と。
この辺から既に、地味さを堪能できるのであります。地味さ&妙味さを、堪能できるのであります。
案内に従って、横が水路の道を南下。昔は外堀があったらしい鹿王院ですが、この水路、名残かな。
で、右京区に多い愛宕地蔵が立つ角を西へ曲がり、鹿王湯の前を通り過ぎたら、そこが鹿王院。
で、鹿王院。築600年の山門と、掲げられた義満筆 「覚雄山」 の額が、お出迎えであります。
駅からの雰囲気を考えると極めて穴場的な立地と言えますが、由緒が由緒ゆえ、やはり客は多し。
私が着いた時も、団体がここで滞留してました。無論、客がいない方がおかしいくらいの名刹ですが。
ただ同時に、近所のジャージのおっちゃんがボ~っと紅葉の加減を見てたりもして、その辺、妙味。
で、400円払って中に入って眺める、石畳の参道の紅葉。
近くによって眺める、石畳の参道の紅葉。
青空を借景にして眺める、石畳の参道の紅葉。
少し奥へ進み、逆方向から参道の紅葉を眺める。
さらに奥へ進み、木陰で色づいている紅葉を眺める。
参道周辺にかなり落ちている、紅葉の落葉も眺める。
紅葉をくぐり抜けるように参道を進み、到着した中門も眺める。
で、中門をくぐった先、庫裏前の紅葉を愛でること、しばし。
庫裏の前の紅葉の向こうにある庫裏も、愛でること、しばし。
庫裏の前の紅葉の向こうにある庫裏の前の庭も、しばし。
庫裏の前の紅葉の向こうにある庫裏の前の庭の先にある庫裏も、しばし。
で、客殿から嵐山と西日を借景に、舎利殿と枯山水庭園を眺める。
塀を借景に、舎利殿に向かう紅葉を眺める。
舎利殿に向かう紅葉と、紅葉に向かう舎利殿を、同時に眺める。
何の借景もなしで、紅葉だけを寄って眺める。
そして、紅葉を借景に眺める、本堂&舎利殿へ向かう回廊。
本堂&舎利殿へ向かう回廊を借景に眺める、舎利殿。
舎利殿の中で眺める、多宝塔の何ちゃら。
で、見るだけ見たので、帰るべくくぐる、中門。
帰る途中の石畳の参道で見かけた、紅葉の落葉。
ある意味で来るのが早く、ある意味で遅かったと思いながら歩く、石畳の参道。
以上であります。独特のインパクトと存在感、そして地味さ&妙味さ、感じてもらえたでしょうか。
客は、喧しい観光外来系若者10人前後の団体×1、
5~6人の地元おばちゃん団体×2、5~6人の若者グループ×1、地元風の老人×5、
中年カップル×2、韓国風単独女性×2~3、単独男も×2~3という感じ。
数的には、確認が可能な程度の量です。しかしこの寺、動線が極めて限られるんですよね。
しかも、通路が極めて狭いため、喧しい連中と遭遇しても逃げる場所がありません。
なので、客層や客数がそれほどでない場合でも、プレッシャーは極めて高く感じられます。
老人多めのベーシック層はさほど問題がないですが、団体やグループは完全に地雷。
外から客筋の判断は出来ないので、興味がある方は博打で一旦入ってみるしかありません。
もちろん、賭けに出る値打は十二分にある名刹ですが。
そんな鹿王院の、紅葉。
好きな人と観たら、より鹿なんでしょう。
でも、ひとりで観ても、鹿です。
【ひとりに向いてる度】
★★★
客筋が良ければ、余裕で★★★★。
ただ、大抵は喧しい団体が来るので、★★★。
【条件】
平日火曜+紅葉散り気味 13:50~15:30
鹿王院
京都市右京区嵯峨北堀町24
9:00~17:00
嵐電 鹿王院駅下車 徒歩約2分
JR嵯峨野線 嵯峨嵐山駅下車 徒歩約10分
鹿王院 – Wikipedia
鹿王院 – 京都市観光Navi