京町家 『鈴 紫野』 を借り切って聖夜を過ごしました。もちろん、ひとりで。 【前篇】

2017年12月24日(日)


京町家 『鈴 紫野』 を借り切って聖夜を過ごしました。もちろん、ひとりで。

メリー・クリスマス!! 恒例のクリスマスひとりお泊まり企画、2017年度版でございます。
独への精神的外圧が最高潮となる夜、世間の馬鹿騒ぎへ背を向け独男として投宿することで、
異教宗主生誕を姦淫&浪費で祝う日本のクリスマスを批判し続けてきた、当サイトの聖夜企画。
しかし激戦を重ねる内、クリスマスが内包する太陽祭というルーツから 「境界」 なるテーマが浮上し、
そのテーマを追求すべく、平安京のスピリチュアル・ゲート 「四堺」 を押さえる形へと企画が変容。
で、郊外&僻地の宿ばかり転戦してたら、今度はインバウンド激増で街中の宿泊状況が激変した為、
「四堺」 コンプ後はこの新たな 「境界」 とも対峙すべく、都心へと戦線を回帰させ、市街戦を開始。
前回となる2016年は、正に京都の真ん中である柳馬場三条下ルの簡易宿所・三条右近橘へ泊まり
京都と全然関係ない小津の映画を観たりもしながら、新たな 「境界」 との激戦を繰り広げたのでした。
というわけで、今回2017年度のネタは、その新たな 「境界」 を見据えるシリーズ、第2弾であります。
出向いたのは、京町家 『鈴 紫野』株式会社レアルが運営する、一棟貸しの町家宿です。
そう、町家です。町家宿は2012年聖夜も泊まってるので、いわば町家ネタとしても第2弾であります。
2010年代後半に入っても京都のインバウンド増加は全く止まらず、宿泊施設は圧倒的に不足し始め、
一時的なヤミ民泊の隆盛&衰退に続き、合法の簡易宿所や町家宿が大増殖するようになりました。
特に 「町家に泊まった」 というコト消費&リノベしまくりの利便性を併せ持つ町家宿の勢いは凄く、
町家の保存&簡便な室数確保が両立出来ることもあって、とにかく雨後の筍の如く増えまくってます。
中でも増えてるのが、 『鈴』 『Gest House Rinn』 などのブランドで展開されてる、レアルの町家宿
物件買い取りの為かKBS京都に企業CMも打ってたので、地元の知名度もあるんじゃないでしょうか。
で、その 『鈴』 群の中で、2017年12月24日に一番安く予約出来たのが、今回泊まった 『鈴 紫野』 。
名が示す通り、 西陣の端とも言える紫野の、極めて庶民的な街の中に立地する宿であります。
そんな 『鈴』 、2012年以来の雪だるま君と共に、ジングルベルな気分で借りてみました。


というわけで、実に5年ぶりの登板となった雪だるま君と共に眺める、 『鈴 紫野』 楽天予約画面
予約を入れたのは、満室回避+早割の為、11月中旬。額は、 『鈴』 では最安とはいえ、15000円弱。
ぼたん鍋+温泉宿泊の2015年さえ凌ぐ当企画最高額の宿泊費に、雪だるま君も顔が青白気味です。
あ、雪だるま君の背後にあるのは、サンタ帽。2015年と同様、魔除けとして持って行くことにしました。


雪だるま君&サンタ帽以外の所持品は、出汁。出費が嵩んだので、食事は自炊を考えてます。
『鈴 紫野』 、公式の写真で見る限りキッチンは相当にしっかりしてて、調理はがっつり出来そうです。
ただ、 『懐古庵』 みたいに調味料まであるかは不明。また、あったらあったで、それはそれで恐いし。
といって荷物は増やしたくないので、煮物が作れる程度の粉末出汁だけ持って行くことにしました。


で、イブ当日の13時、紫野へ。でなくて、チェックイン手続きの為、京都駅前のレセプションへ。
レセプションは、塩小路通の西、いわゆる三哲の歩道橋の辺にあります。で、駅からそこまで、徒歩。
京都駅は、クリスマスらしき混雑もあるといえばあるものの、普段の日曜といえば普段の日曜な感じ。
そもそも普段が混み過ぎ、とも言えますけど。塩小路通も、雰囲気は普段通りという感じでしょうか。


で、10分ほど歩き、 『鈴』 レセプションへ到着。日本語表記が超少ない、いかにもな雰囲気です。
店内では、説明各種を聞き、宿帳ならぬ契約書みたいなのに住所・電話番号・署名などを肉筆記入。
暇なので、16時チェックインに関わらず昼過ぎに来ましたが、手続きだけなら早めでもやってくれます。
あ、チェックアウトする時は、宿の返却ボックスへ鍵を入れるだけ。レセプションへ戻る必要は、なし。


で、その鍵をなくすと1万円かかるぞの件なども説明を受けた後、5分ほどで手続きは終了。
で、鍵と、地図などが書かれたプリントを渡された後、レセプションを退出。で、バスに乗り、紫野へ。
『鈴』 、各町家までの送迎もやってるそうですが、私、そういう車の中が気まずくて苦手なんですよね。
紫野まで、割とかかります。渋滞だと、もっとかかります。気まずい時間、長くなります。ので、バス。


『鈴 紫野』 の最寄バス停は、乾隆校前206系統なら、1本で行けます。本数も、非常に多し。
なので、レセプションのすぐ近くにある七条堀川バス停から206系統に乗り、千本通をひたすら北上。
で、約20分後、乾隆校前へ到着。バス停は、上千本商店街の、ど真ん中。渋い店が多い商店街です。
が、日曜だからか、開いてる店は少なめ。飲食店も、かなり少なめ。夕食は、やはり自炊でしょうか。


着いたからには宿へ行くわけですが、時間は、14時半前。16時CIなので、まだ入れません。
ので、食材探索も兼ね近隣散策をしときます。夜は雨らしいし。で、まずは、千本ゑんま堂に御挨拶。
六原と同様の霊的ゲートでもある、紫野 or 蓮台野。 魔除けのサンタ帽、効力を発揮してくれるかな。
続いて、鞍馬口通を東へ入り、15時前なのに開いてた船岡温泉の前などを通って、大徳寺方面へ。


食材をゲット出来そうな店などを物色しながら歩き続ける内に、大徳寺境内たる大徳寺町へ。
紫野大徳寺町。紫野といえば上品蓮台寺のイメージが強いですが、大徳寺の町でもあるんですね。
貸切りにならない程度の参拝客がいる大徳寺では、拝観無料の境内にて、禅ワールドをしばし堪能。
何か悪いので、北側の今宮神社あぶり餅食って金を使おうかと思ったら、両方とももう閉店済み。


さらに北へ歩くと、牛若丸誕生井がある辺に京野菜の直売所あり。で、200円の丸大根あり。
値段的にもサイズ的にもひとり食いに最適なので、購入。備え付けの新聞で包み、持って帰ります。
ここからさらに北へ向かうと、畑とかが増えて風情があるんですが、時間は16時に近付いてきました。
ので、仏教大の辺から千本通を、南へ。途中、上品蓮台寺の前を通ったので、上品に道からお参り。


紫野十二坊町&閻魔前町という、もっともだけど凄い町名を見ながら南下してると、餅屋あり。
上千本商店街の大福餅老舗です。御手洗団子にも惹かれますが、田舎饅頭2つを茶菓子に購入。
で、大福餅の南の寺之内通を西へ少し進み、小路を北へ入った所が、 『鈴 紫野』 。では、行きます。
平日だと機織の音がちょくちょく聞こえ、人も車も皆忙しそうな道を、大根と饅頭をぶら下げ、西へ。


で、到着した、 『鈴 紫野』 。本当に、町家です。遂に、一軒家の町家を借り切りましたよ。
と、感動したい所ですが、前の道が本当に狭くて距離が確保出来ず、正面全景が全然撮れません。


非現実的な画角の超広角なら色々撮れますが、この日私が持ってたのは広角端28mm。
なので、全然撮れません。とか思いながら、呉服屋格子&厨子二階を借景として観る、 『鈴』 雪洞。


というか、本当に隣近所は民家などが建て込んでるので、この家だけ撮るのが、超困難。
とか思いながら、平格子戸&出格子クーラー&雪洞を借景として観る、玄関の 『鈴』 パープル暖簾。


どうせならと接近して観る、一文字軒瓦と、塞がってるけど虫籠窓、そして何らかの出窓。
『鈴 紫野』 の町家加減、伝わったでしょうか。全然、伝わりませんか。でももうそろそろ、入室します。


で、室内に入れば、思いっきり改装されまくった感じの、リノベ町家。


吹き抜けになってるLDには、一枚板のテーブルと一枚板の椅子。


吹き抜けになってる天井には、ゴロンと張り巡らされてる、ゴロンボ。


そんな山小屋状態のLDとは一転し、純和風な感じの、みせの間。


走り庭を根絶し、東京炊事ならぬ西洋炊事な仕上がりの、キッチン。


LD奥で、 「坪」 よりも 「壺」 の字が相応しい佇まいを誇る、坪庭。


と、一階まわりを28mmでざっくり眺めてみました。リアルな距離感や空間感、伝わったでしょうか。
一通り眺めた後は、荷物を解き、テーブルで一服。雪だるま君にも、本格的に御登場を願いましょう。
「根性が腐り切った独なみんな、お久しぶり。雪だるま君だよ。この5年間、みんな元気にしてたかな」
「お兄さんは、相変わらずだよ。僕を撮ろうとして、おしゃれなこのテーブルで醜く腰をかがめてるよ」


一服で飲むのは、備え付けの 『鈴』 ミネラルウォーター。茶菓子は、大福餅で先刻買った饅頭。
キッチンには沢山の皿が用意されてますが、小皿は何故かないので、デカい平皿に盛ってみました。
雪だるま君も、何か嬉しそうです。 「そう、僕は今日と明日、こんなことに付き合わされ続けるんだよ」
「お兄さんは、宿の中で色々絵作りして、高価い宿代の元を取ろうと考え、僕を連れて来たんだよ」


そんな雪だるま君を連れ二階へ上がり、階段から眺める、天井。


吹き抜けにされてない厨子二階から見ると、妙に至福な、ゴロンボ。


で、残存厨子二階の道に面してる側は、厨子二階感が強烈に堪能出来る形状の、寝室。
頭部への圧迫感が、心地良さそうです。ベッドは2台。ベッドメイクされてるのは、もちろん、ひとつで。


で、厨子二階奥側は、ゴロンボが見える予備寝室。で、この何もない和室が、私のお気に入り。
「無の間」 と命名し、寝室にあった作務衣に着替え、ゴロンとゴロンボを眺めて悦に入ること、しばし。
室温が快適なんですよね、エアコンなしでも。大人なくつろぎに浸る私を、雪だるま君も見守ってます。
「貧乏人のお兄さんは、狭くて何もないこの部屋が、結局一番居心地良いみたいだよ」 。以下後篇。

京町家 『鈴 紫野』 を借り切って聖夜を過ごしました。もちろん、ひとりで。 【後篇】 へ続く


 
 
 
 
 
鈴 紫野
京都市北区紫野中柏野町10

京都市バス 乾隆校前下車 徒歩約3分
嵐電 北野白梅町駅下車 徒歩約20分

紫野|町家の宿 「鈴」 – 公式