総本家にしんそば・松葉で、鱧そうめんと鱧天せいろを楽しみました。もちろん、ひとりで。

2018年7月31日(火)


総本家にしんそば・松葉で、鱧そうめんと鱧天せいろを楽しみました。もちろん、ひとりで。

3000円前後で、鱧を楽しむ。難しいようで、案外と楽で、でもやはり難しいことです。
食べるだけなら、難はありません。夏の京都では、値段を問わず多くの飲食店が鱧を扱います。
鱧天を出す蕎麦やうどん店も、多し。居酒屋なら、天婦羅のみならず落としを出す店も、多し。
値段だけ考え、そして 「夏の京都で鱧を食べた」 という既成事実を作るだけなら、簡単なわけです。
が、そんなブランド季節食としてだけ鱧を楽しむのは、どこか片手落ちではないかと、私は思います。
祇園祭の別名 「鱧祭」 が示すように、この魚が祭とシンクロした食材であることは、御存知の通り。
そして、防疫祭たる祇園祭と同様、鱧料理が京都の地理から生じた文化であることも、御存知の通り。
夏に京都で鱧を食すのであれば、こうしたバックグラウンドも共に味わう形で、食すべきではないか。
「海が遠い」 「暑過ぎ」 「平安時代から人多過ぎ」 といった地理を、舌で体感すべきではないか。
またこの体感を、ある種の祝祭性の中で実現して初めて、人は鱧を食したことになるのではないか。
『ひとりで食べる鱧』 を予算3000円台で再開した後、私はそんなことを考えるようになりました。
もちろん、こうした要素と共に鱧を食す際、3000円台という枠は、足枷になると言わざるを得ません。
それでも 『ひとりで食べる鱧』 再開後の当サイトでは、この困難なミッションに正面から取り組み、
山鉾巡行当日に於ける回転寿司鱧づくしや、晩夏のひとり池田屋事件などを、やらかしてきました。
しかし、足りない。何よりも、 「海が遠い」 という京都の地理をダイレクトに表現する要素が、足りない。
こうした要素も含め3000円台に収まるメジャー店、ないかな。と思ってたら、ありました。松葉です。
松葉。かの南座と共に祇園の入口に屹立する、にしんそば総本家として知られる蕎麦店であります。
北の大地より届く、身欠きニシン。その干物のニシンを戻して煮込み、蕎麦と共に食す、にしんそば
実に 「海の遠さ」 を表す料理です。また松葉は、夏には鱧そうめんなどの鱧メニューを展開。
なので今回、祇園祭ラス日に松葉で鱧を食し、夏と海と京都の関係を舌で考えてみたのでした。
なので当然、にしんそばも、食うのです。食わなければ、趣旨的におかしいのです。


7月31日の12:40頃に到着した、京阪・祇園四条駅前。同時に、松葉にも着いてしまいました。
出口、直結。 「他に何も食うな」 という勢いで、 「にしんそば」 と出てますね。大丈夫、食いますから。
このまま入ってもいいですが、今日は祇園祭のラス日。八坂神社・疫神社の夏越祓があるんですよ。
間に合えば、茅の輪もくぐれるはずです。ので、まずは真直ぐ東の八坂神社へと、四条通を東進。


鍵善良房が御馴染のおばけ提灯を出してるのを横目で見たりしながら、四条通を更に東進。
歩道は、ほぼ中国語しか聞こえない状態。旗に先導されるどうしようもない団体が、増えたというか。
ただ、調子に乗ったカップルの類は、随分減った気がします。あと、この日は人出自体、やや少なめ。
祇園祭、終了ですからね。晴れ過ぎてる空を見ると、単に余りに暑過ぎるからとも思えてきますが。


そんな晴れ過ぎ&暑過ぎな空の下でも、常と変わらぬ美しさを誇る八坂神社、到着しました。
門前では、今日限りで降ろされるであろう 「祇園祭 七月一日~三十一日」 の幟が、旗めいてます。
ということは、疫神社の夏越祓、まだやってるな。と思い、着物コスプレの中国人の間を通り、境内へ。
しかし門の先には、茅の輪、なし。撤収済み。残ってたのは、神事用のテントのみ。早い、早過ぎる。


茅の輪の撤収、何か年々早くなってないか。とか思いながら、お参りだけするべく、本殿へ。
本殿周辺も、暑さのためか、やはり人出は少なめ。あるいは、ぼちぼち飽きられ始めたんでしょうか。
こちらは例年通り、社務所前のギオンマモリ販売をスルーしてから、本殿裏のギオンマモリをタダ見。
純白の花弁を空へ向け開くギオンマモリに、この社の守護を頼んだら、いよいよ松葉へ向かいます。


で、戻ってきた、松葉。逆光で威容を誇ってる建物の全てが、松葉です。嘘です。
左側の南座みたいな建物が、御存知、南座。で、右側のやや昭和チックな建物が、松葉


四条通を渡って、より近くで、そしてより昭和感を濃厚に感じながら見上げる、松葉。
昭和どころか明治よりこの地で続く、名店であります。あの鳥が何なのかは、知りません。


四条川端のいい雨宿り&日除けポイントである店前では、メニュー各種を掲示中。
同時にドアには、店の前を通る祇園祭の神輿の御神酒張紙も、当たり前のように掲示中。


そのドアの傍のケースでは、鱧そうめんや鱧天せいろなどの鱧メニューも掲示中。
どっちも、美味そうですね。両方食うと3000円オーバーで、にしんそばが食えませんけど。


で、中に入ると、 「お二階どうぞ」 と言われ、超狭いレトロな階段を上って、二階へ。
二階は、昭和の食堂然とした大きさと雰囲気。窓側に空き席があったので、そっちに着席。


着席したら、さっき逆光で見上げた建物の窓から、順光で四条通を見下ろしたり。
見下ろしながら、オーダーを考えます。にしんそばと一緒に、鱧メニューは何を頼もうかな。


松葉の鱧メニューは、鱧そばなどの麺類各種に加えて、落としなどの単品もあり。
「落とし単品+にしんそばで行くか」 など、3000円台で収まる組み合わせを思案し、注文。


で、結局頼んだのは、鱧天せいろ。夏ですから。夏といえば、せいろ蕎麦ですから。


鱧天せいろの鱧天は、割と、良い感じ。骨切りが細かく、ほっこり鱧を楽しめる感じ。


蕎麦そのものは、京都の蕎麦。もはや伝統芸能とさえ言いたくなる、京都の蕎麦。


そして続いて頼んだのは、鱧そうめん。夏ですから。夏といえば、そうめんですから。


鱧そうめんは、梅肉を添えた落としが乗ってるもの。で、この落としが割と、美味い。


そうめんより明らかに人肌感がある締め方が、美味い。そうめんは、普通にそうめん。


というわけで、鱧天せいろと鱧そうめん、完食。合わせて、3000円台に収まりました。
え。ああ、にしんそばですか。そういえば福井駅のにしんそばって、安くて美味いですよね。


食後、見飽きた光景を窓から見てると、外人団体が来て席が足りなげだったので、帰ります。
3400円ちょっとの勘定を払って店の外に出ると、店の前はまたも、中国語しか聞こえないような状態。
外国が近いこの御時世に、 「海が遠い」 とか言っても、意味ないですよね。そういうの、古いですよね。
帰り際、隣にある祇園饅頭の水無月が気になりましたが、茅の輪未潜のため、買わずに帰りました。

客は、地元風のおばちゃん二人組数組と、近隣系の親子連れ一組、
そして観光系の中年夫婦数組と、あとは中国人女子グループが一組いたくらい。
人数は少ないですが、外観の割に店内は狭いので、8割方埋まってる感じでした。

本文で触れてる通り、蕎麦は本当に京都の蕎麦な松葉ですが、
鱧の風味はなかなか面白いというか、私は美味いと思いますし、結構好きです。
以前に鱧そうめんを食べた時も、そうめんと鱧の温度がやはりはっきり変えてあって、
キンキンに冷やしただけではない落としの風味みたいなのが、あったんですよね。
店内の昭和な雰囲気も、味。タイミングが合えば、楽しんでみてはいかがでしょうか。

そんな総本家にしんそば・松葉の、鱧そうめんと鱧天せいろ
好きな人と食べたら、よりにしんそばなんでしょう。
でも、ひとりで食べても、にしんそばです。


 
 
 
【ひとりに向いてる度】
★★★★
場所柄、観光系の客が多いにも関わらず、
無形文化遺産級のネイティブなテイストがある。
他にはないタイプの鱧が味わえるのも、味。
 
 

総本家にしんそば・松葉本店
京都府京都市東山区川端町192
11:00~21:30 水曜定休

京阪電車 祇園四条駅下車すぐ
京都市バス 四条京阪前下車すぐ

京都 総本家にしんそば・松葉 – 公式