吉田神社の節分祭・追儺式へ行ってきました。もちろん、ひとりで。
吉田神社の節分祭・追儺式へ行ってきました。もちろん、ひとりで。
京の町の節分に初めて触れたのは、京都へ来て間もなくの、寒い日のことだった。講師として通っていた女子高校からの帰り道、そのころはまだ東大路を走っていた市電の中で、何か異様な熱気を感じた。ふと外へ目をやると、いつもは人影もまばらなはずの吉田神社の参道が、彼方まで人の波に埋め尽くされていたのだった。道路はいつになく渋滞しており、当日だけ運行されるという吉田と壬生間を結ぶ臨時バスに、年配の人たちが我先にと乗り込んでゆく ━━━そういえば数日前の新聞に、各寺社の節分の参詣の案内が一斉にでてたっけと、ようやくことの次第を理解したのだった。
(真矢都 『京のオバケ』 より)
吉田の節分は、異常です。
ネイティブの人には自然かも知れませんが、部外者には凄く異常に見えます。
都の表鬼門の守護神として創建され、 厄除けの神様として現在も篤い信仰を集める、吉田神社。
旧暦が密かに生き続ける京都に於いて「本来の大晦日」たる節分に行われるその節分大祭は、
極めて気合の入ったものであり、裏鬼門・壬生寺の節分会と共に高い集客力を誇ってます。
が、壬生寺がネイティブさでは圧倒的ディープネスを放ってるのにも関わらず、
吉田の節分はそれを遥かに凌ぎ、異常です。何が異常かといえば、熱狂の温度感かなと。
この日の追儺式など、殺人的混雑が出来してます。しかし、どこかみんな、醒めている。
それも現代人として醒めてるのではなく、何か別の所で醒めてる感じが、凄くする。
その感じが、他にはない、吉田の節分独特の不気味さと魅力を生んでるような気がします。
そんな違和感も楽しみながら、古式に則った追儺式を存分に堪能したかといえば、
ひたすら殺人的混雑に振り回されただけで終わったわけですが。
2月2日、17時半の、吉田神社参道入口。
普段は京大の構内みたいなとこが、京大と関係ないアイテムで埋め尽くされてます。
世間的には節分の前日ながら、1000近い露店が既にフルラインナップで揃い、フルに稼働中。
ついでに、手前交差点の混雑と交通規制も、フルスロットル状態。恐るべし、吉田の節分。
普段は意味もなく広い道が、激狭+大混雑。既に牛歩の世界です。
何故か男の3人組やメガネ男が多かったりするのは、京大がらみなんでしょうか。
あと、左京区顔・左京区ファッションとでもいうべき人間も、多し。あるでしょ、そういうの。
二の鳥居をくぐって階段登った先の、境内。こちらも当然、大混雑。
左に見えるのは、御存知、八角柱型の火炉。翌日3日の深夜に、火炉祭で大炎上します。
火炉、参拝者が持ってきた神札・神矢・絵馬などが入ってますが、たまにダルマがいたりして。
社務所前では、地元企業協賛による福引賞品を陳列中。
200円の福豆に抽選券が付いていて、後日当選番号を発表するというシステムです。
福引といっても、子供が喜びそうな夢溢れるブツはさほどなく、食い物や飲み物など、現実路線。
そのかわり、ヴィッツやテレビなど別の意味で夢溢れる玉は、チラっと入ってます。
何とか三の鳥居を通り、到着した追儺式の舞台=舞殿前。
ご覧の通りの有様です。まだ開始20分前ですが、もはや歩くことさえ、ままなりません。
開始15分前。完全に動けなくなりました。
「歩きにくい」ではなく、文字通り動けなくなりました。自分はここで砲台になります・・・
18時ジャスト、追儺式がスタートしました。
写真は、登場した方相氏=鬼はらい人と、デジカメモニタの流れる光。
「方相氏がどれか、わかんない」って、真ん中の下にいる角が生えた人ですよ。多分、そうです。
方相氏が厳粛にお祓いを行う中、鬼が乱入しました。
恐らく、乱入したはずです。全然見えないので、確認のしようがありませんが。
乱入した鬼は、何かをしています。
見えないので詳細は不明ですが、古式の追儺に則った何かをしています。
写真は、かろうじて撮れた何か。恐らく鬼だと思いますが、ピンボケ過ぎて確信は持てません。
何ごとかが粛々と進行している、舞殿周辺。
ご覧の通り、誰もがデジカメを頭上高くに掲げて撮影を試みるわけですが、
四方から常時ガンガンと人が当たって来て全身が揺れるため、ブレずに撮るのは至難の技です。
そのうち、他人のカメラのモニタで「中継」を楽しむ者も、続出。
私のモニタは「あれあかん、何も写ってない」という寸評を頂きました。どうも。
とかやってるうちに、追儺式、終了。終了したことさえよくわからないうちに、終了。
何が始まり、何が行われ、何が終わったのかもわからないまま、全ては過ぎ去ってしまいました。
追儺式が終わっても、境内の人が減る気配は全くありません。
歩けるようにはなりましたが、数自体はさっきより増えてるかも。吉田、恐るべし。
本社前の特設ステージみたいなとこでは、巫女さんが御神楽を舞い、追儺ノ矢を絶賛授与中。
もちろん、しょーばいはんじょでささもってこいな繁盛ぶりでございます。
バイト風味の福娘が売る福豆に、殺到する人民。
福豆の袋のみならず、この祭で販売される限定アイテムは、いずれも梔色で染められてます。
クチナシの実の色に由来するその独特のイエローカラーは、古くから魔除けの力があるとか。
おばちゃん総出の授与所も、しょーばいはんじょでささもってこいな繁盛ぶり。
境内は一応、左側通行で規制されてます。
が、あまりに混雑が凄過ぎ、どっちが右か左かわからんまま流されてきた、菓祖神社。
京都菓子業界が建てた社で、祭神は菓子の神・田道間守と饅頭の神・林浄因です。いや、マジで。
この日は豆茶の接待をしてたそうですが、流れ着いた時には既に終了。
やはり右も左もわからんまま流されてきた、大元宮。
虚無大元尊神を中心として全国八百万の神々を祀りまくる、吉田神道の根元殿堂です。
特別公開に集まった客の多さが、吉田神道がブイブイ言わしてた明治以前の時代を偲ばせます。
奥では、背の高い異様な厄塚が突っ立ってるはずですが、近寄りようもなし。
やはり右も左もわからんまま流されてきた、露店。
露店のラインナップの充実とその繁盛ぶりは、ちょっと異様なものがあります。
スーパーボール釣りなどに子供が群がる姿には、正しき縁日の佇まいと感じることができますが、
鮎の塩焼きにマジで群がる若者たちの姿には、何を見出せばいいのでしょうか。
恐怖と混乱の中、恵方巻を売ってたので購入。
聖護院の仕出し処 『山秀』 謹製で700円。中身は、シンプル&ストイックな巻き寿司。
そして吉田の節分名物、河道家のれん会の年越そば。
深層意識で旧暦を死守する京都ならではの屋台です。私は新暦で動く偽京都人なので、スルー。
偽京都人でも、順正の湯豆腐屋台は何となくスルーできず。
スチロールの食器に入った湯豆腐300円を食す。湯と豆腐と醤油の味がしました。
イワシ屋台もまた、スルーできず。
ティッシュに包まれて提供されたイワシ200円を、その場で頭から食い切りました。
頭は本来玄関に飾るもんですが、こんな猛烈に匂いを発するもん、電車に持ち込む根性はない・・・。
で、帰ります。
やっぱり、来た時よりも圧倒的に人が増えてます。
客層は、完全なる烏合の衆状態。
まともに属性を識別してる暇がないくらい、人出と密度が物凄いです。
親子連れをメインに、老若男女、全てがいる感じ。ただし、観光客風の人はあんまりいません。
目についたことと言えば、先述の男3人組とメガネ男の多さと、定住系の外人の多さくらいでしょうか。
とにかく、人のことなんか気にしてられない状況とは言えます。
ただ、これだけ混んでいてもマナーは比較的よろし。
南部なら完全にスルーレベルの衝突でも 「すいません」 と謝る人が多かったり。
たまに思いっきりぶつかってる来る奴がいたら、はぐれ虫のDQNだったり。品のいいところですね。
あ、追儺式で節分ハイに陥ったオッサンなどは除きますよ、もちろん。
携帯片手に割り込むオッサンも、盛大にいます。
そんな吉田神社の節分祭・追儺式。
好きな人と来たら、よりなやらいなんでしょう。
でも、ひとりで来ても、なやらいです。
【客層】 (客層表記について) カップル:1 女性グループ:1 男性グループ:2 混成グループ:若干 修学旅行生:0 中高年夫婦:不明 中高年女性グループ:不明 中高年団体 or グループ:不明 単身女性:0 単身男性:若干 |
【ひとりに向いてる度】 ★★★ 人が多過ぎて、細かいことが気にならない。 少なくとも、カップルの色気プレッシャーは、皆無に近い。 人間の海が苦手でなければ、 半端に人が多いよりもむしろ落ち着けると思う。 ただ、追儺式はまともに見れないと思っておいた方がいい。 【条件】 |
吉田神社
京都市左京区吉田神楽岡町30
拝観自由 社務所9:00~17:00
京都市バス 京大正門前下車 徒歩約5分
京阪電車 & 叡山電車
出町柳駅下車 徒歩約20分
吉田神社 – 公式
吉田神社 – Wikipedia