ゑんま堂大念佛狂言を観に行きました。もちろん、ひとりで。
千本ゑんま堂のゑんま堂大念佛狂言を観に行って来ました。もちろん、ひとりで。
千本通を北上してると、妖しい焼きそば屋と共に現われるやたらディープな寺・千本ゑんま堂。
六道珍皇寺で有名な朝廷と霊界のダブルワーカー・小野篁とも縁が深いというこの寺で、
毎年春に行われる民俗芸能の公演が、ゑんま堂大念佛狂言です。
中世の大念仏会で、庶民に宗教世界を具体的に唱導するため始まったという念仏狂言。
京都には、ゑんま堂以外にも壬生寺、嵯峨の清涼寺、そして神泉苑にもそれぞれ存在し、
また壬生・嵯峨・ゑんま堂の3つで「京の三大念仏狂言」という呼び名も広く認知されてます。
中でもこのゑんま堂狂言は、背景も、趣向も、若干ユニーク。
壬生・嵯峨・神泉苑の狂言は円覚上人が始め、芸術的とまで言われる無言劇であるのに対し、
ゑんま堂狂言はこの寺を引接寺として開いた定覚上人が創始、そして演目の大半がセリフ劇。
かつて京の刑場墓地だったというこの地で、潜伏する盗賊を金剛杖1本で懲らしめ、
善心まで取り戻させた守護役人・為朝の奇跡を伝える狂言は、徹底して勧善懲悪+極めて庶民的。
滑稽味やケレン味で人気は近代に至っても続き、昭和初期には20日間も公演が行われたとか。
戦後の後継者不足で一時中断するも、のちに復活。で、現在も継続中。
この寺の名物・普賢象桜を気に入った室町三代将軍・義満の
「桜の盛りを期して狂言をとり行え」といういいつけを守るかのように、毎年春に公演が行なわれます。
2011年も開催期間は5/1~5/4の4日間。そのうちの1、3、4の夜の部に出かけました。
今夜も怖過ぎる顔で善男善女を出迎える、本堂の閻魔大王様。
その手前には「ほうらく割り」で割られる大量のほうらくが奉納されてます。1枚、500円。
狂言公演中もで奉納可能。私も一枚、いっときました。力のない字の「心願」ですな・・・。
夜でもなお美しく咲く、ゑんま堂名物・普賢象桜。闇の中で妖しき美を誇ってます。
傍には紫式部ゆかりの九重塔もあり。ついでに紫式部像もあり。こちらは夜見ると、怖いです。
ゑんま堂狂言は、本堂隣の特設舞台で上演。椅子、おおむね埋まってます。
昔は専用の狂言舞台があったそうですが、1974年に所蔵してた狂言衣装ともども焼失。
しかしそれを機に中断してたこの狂言が復活したんだから、世の中わからないもんです。
初日は夜の部のみの公演で、最初に演じられるのは『えんま庁』。
ゑんま堂狂言にとって重要な演目であり、そのため決まって公演の最初に演じられます。
鬼にいじめられた亡者が、閻魔大王の計らいで極楽へ案内されるという話(かな?)。
セリフ劇で知られるゑんま堂狂言の中で、2つしかない無言劇のひとつです。
続いては『いろは』。寺子屋に於ける先生と子供のかけ合い。
子供役は本物の子供が担当。セリフ劇ならでは、というよりほとんど漫才のようなやりとりが、愉快。
『花盗人』。大名が花くらべの会へ出かけるも、お供の太郎冠者が花をもってくるのを、ど忘れ。
代わりを探してるところに現われるのが、写真の謎の爺。で、大名と太郎冠者が振り回される、と。
で、初日のラストは『紅葉狩り』。
信州戸隠山へ鬼神退治の勅命を受け出かけた平継茂と太郎冠者は、紅葉の美しさに見とれて、酒宴。
するとどこからともなく女が現われ、盛り上がってさらに呑み、継茂と太郎冠者はダウン。
で、女は・・・という筋。
神勅に窮地を助けられた継茂の前に、ラスボスの鬼神が登場。
ワイルドな立ち回りを展開したのち、見事鬼の首を落とし、終了。大入りの初日でございました。
次に行ったのは、公演3日目の夜。3日と4日は、昼も夜もフル稼働で公演が行なわれます。
ゑんま堂に着いたのは、ちょうど『靭猿』が始まったところでした。
大名から靭用に猿を差し出せと迫られた猿引きと猿が、うまいことやって場を切り抜けます。
後半、ダンスバトルの如く踊り狂う大名と猿が、見物。左の流れてるの、猿です。
続いては『寺ゆずり』。世の中を舐めてるけど要領はいい若僧「さんみさん」が、寺をいただく話。
とにかくこ「さんみさん」役の人が、セリフ回しも身のこなしも面白い、面白い。
『寺ゆずり』には、ゑんま堂狂言一番の「美人」と言われる檀家「おなあ」さんも登場します。
左のおたふくささんが、そうです。「さんみさん」と、実に愛嬌ある掛け合いを披露。
右は、寺に馬を借りに来た客。何でこんな怖い顔なんでしょう。
そして遂に出ました、『ほうらく割り』。
永代供養の褒美を賭けて、ダメダメなほうらく屋と利口な太鼓屋が、芸比べをするという筋。
狂言中にも続々と積み上げられる、ほうらく。それを「マジすか」という顔で見るほうらく屋と庄屋。
で、バッシャーーーーーーーーーーン。太鼓屋がほうらくを割りまくります。
割るだけ割って、3日目終了。初日よりさらに大入りでございました。
4日もやはり19時頃にゑんま堂に到着し、『牡丹獅子』から鑑賞。
大名屋敷に忍び込む獅子を退治するという筋ですが、メインはあくまで獅子のパフォーマンス。
そして公演全体の大トリとなる演目は、『千人切り』。
守護役人・為朝に退治された鬼や盗賊が善心を取り戻す寺伝にちなんだ内容であり、
出演者全員が面なしで登場。為朝役にひとりずつ刀を当てられていきます。
ゑんま堂狂言の根本となる内容ゆえ、後半では本堂内へ移動、念仏を唱えます。
終了後は、泥棒よけのご利益がある矢を有料配布。おひらきでございます。
3夜行って3夜とも、客層は大体同じテイスト。基本、烏合の衆という感じです。
カップル、あんまりいません。いても、うわついてるようなのはいません。グループ各種も、地元モード。
GW真っ只中でしたが、観光客らしき姿はほぼ見当たらず。自転車で来てる人、非常に多し。
単独女性は、ディープやおひとりさまというより、殺伐系。
単独男性は、カメラマン親父ばかりだが、デジカメや写メのみの若い地元の子もいました。
そんな千本ゑんま堂の大念佛狂言。
好きな人と見たら、より大念佛なんでしょう。
でも、ひとりで見ても、大念佛です。
【客層】 (客層表記について) カップル:若干 女性グループ:若干 男性グループ:1 混成グループ:0 小中高生:1 中高年夫婦:2 中高年女性グループ:1 中高年団体 or グループ:4 単身女性:若干 単身男性:1 |
【ひとりに向いてる度】 ★★★★ 気まずさは特になし。 徹底して地元志向だが、特に排他的でもなし。 浮く事は多分ない。 【条件】 |
千本ゑんま堂
京都市上京区千本鞍馬口下ル閻魔前町34
9:00-17:00
千本鞍馬口 あるいは乾隆校前下車 すぐ
閻魔堂大念佛狂言は毎年5月1~4日開催
ゑんま堂公式 千本ゑんま堂公式ホームページ
狂言公式 千本ゑんま堂大念佛狂言保存会
Wikipedia 引接寺 (京都市)