雲龍院の夜間ライトアップへ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2011年11月22日(火)


雲龍院の夜間ライトアップへ行ってきました。もちろん、ひとりで。

ようやく例年並みに冷え込みつつある、2011年晩秋の京都。
晩秋、そう、晩秋なんですよね、もう。ですが、紅葉の方はあまり進んでません。
洛北あたりは相当いい感じに色づき始めたようですが、それより以南は、まだまだ。
にも関わらず「京都駅から一番近い東山の奥座敷」、南も南の雲龍院へ行ったのは何故かといえば、
あの辺、寒いんですよ、山だから。あと、秋のライトアップが25日までだし。
雲龍院。皇室の菩提寺である御寺・泉涌寺塔頭にあらずして、別院、別格本山。
泉涌寺と同じく皇族とのゆかりが深いことから、見た目は塔頭ながらも、別格扱いとされてます。
南北朝時代に後光厳天皇の勅願で建立され、北朝歴代の御尊牌を霊明殿に奉安、
後円融天皇の発願で写経道場も作られますが、応仁の乱などの戦乱で何度となく焼亡しまくり。
江戸時代の始めになって、中興の祖・如周宗師により写経道場が現在地に再建され、
その再建のスポンサー・後水尾天皇からは、現在も使われる写経会の仏具が寄進されました。
雅であります。やんごとなきであります。そして、別格であります(意味不明)。
雅なる写経、最近では体験型観光の人気コンテンツになってますが、夜間営業はなし。
かわりに、徳川期の武家茶席・通称「おぶけ茶席」を、有料オプション1000円なりでいただけます。
が、武家でもなく茶の心得もない私は、別格である夜の紅葉のみを拝ませていただきました。


雲龍院は、泉涌寺本坊南の高所にあります。
よってアクセスは泉涌寺と同じであり、泉涌寺と同じく上り坂の参道をテクテク歩くことになります。
夜の山門をくぐれば、あたりは、暗闇。彼方にかすかに見えるのは、ライトアップの看板のみ。


泉涌寺の門前まで来ると、行灯が雲龍院まで案内してくれます。し、渋い。
タクシーに乗れば入り口まで連れてってくれますし、実際、数台が私を追い抜いて行きましたが、
この風情を一瞬で通り過ぎるのは、ちょっと勿体ないかも知れません。


しばらく歩いて辿りついた、雲龍院・山門。ライトアップ、派手っすね。
現場にいた時は、闇の中を歩いてきたから派手に見えるのかとか思ってたんですが、
写真で見直してみても、結構、派手。


行灯が誘導する参道。左側には、セクシーな衆宝観音と、知徳照十方の球体あり。
拝観受付は奥の書院入り口にあるので、このあたりはタダ見ができるといえばまあ、できます。
でも、あんまり無作法なことはやめましょうね。観音さまに怒られるかも知れません。


観音さまのそばにあった、紅葉の色づき。
モヒカンのてっぺんだけ染めたような感じでしょうか。やはり早かったか。


受付で「えと、お茶・・・」と言いかけた寺の人を「拝観だけで」と遮り、500円支払って、中へ。
入ってすぐのところにある「どの方角からでも睨まれる」龍に睨まれながら回廊を通り、
後光厳天皇と後円融天皇の坐像が鎮座される霊明殿を、まずはお参り。


本堂・龍華殿へ向かう途中には、徳川慶喜が寄進した灯籠あり。
元は孝明天皇陵にあったものを、幕末に薩長が破棄。それを当院住職がこっそり移設したとか。
あと、龍華殿といえばこけら屋根。下からではもちろん見えませんが、見えた気になってください。


本堂にして重文、そして現存最古の写経道場である、龍華殿。
中には本尊と日光・月光菩薩が鎮座、後水尾天皇から寄進された写経用の道具もあります。
掲げられている超古い扁額は、後水尾天皇の第七皇女の光子内親王の筆になるもの。


龍華殿の正面には、勅使門。左には、秋篠宮悠仁親王のお印の高野槙。
勅使門、最近でも稼動していて、常陸宮華子妃殿下がお使いになられたそうです。
どうでもいいけど、紅葉求めて寺を巡ると、何で後水尾天皇の名前ばっかり出てくるんでしょうか。


で、庭園です。廊下に出て見る、別格の紅葉。
色づきは不十分ですが、残った緑が別格感を醸し出してるとも言えるかも知れません。
全然言えないかも知れませんが、言えるかも知れないと思えば、言えるかも知れません。


書院・大輪の間から見る、庭園。
「おぶけ茶席」は、この間でいただけます。寒いので、客は奥の方へいましたが。
ちなみに左の方にかすかに写ってるのは、大石良雄aka内蔵助の筆による書「龍淵」。
伯父が来迎院の住職なので度々訪れ、茶室含翠軒では討ち入りの密議をしたとかしないとか。


出ました、蓮華の間。
襖の強烈な額縁効果が、不十分aka別格な紅葉を、実物以上に魅せてくれます。
そういえばこの翌日、この間で『報道ステーション』の中継をやってました。
お寺の方のブログによると、クルーが50人ほど来たそうですよ。入るのか、あんな狭いとこに。


そして、迷いの窓&悟りの窓。
もちろん、右の四角いのが迷いを表し、左の丸いのが悟りを表してます。
悟りの窓といえば源光庵が有名ですが、悟りもひったくれもない混雑になる向こうに比べると、
こちらの悟り加減は、ちょっと小さいですが、なかなかに別格です(意味不明)。


悟りの間西側の窓から見える、五色の紅葉。
このずっと奥には、京都を殺人のメッカにしたサスペンスの女王・山村美紗が眠る墓があります。
最近は屋内供養塔もできたとか。「皇家ゆかりの菩提寺を、あなたの菩提寺に」だそうです。


雲龍院といえば忘れてはならないのが、名物・走り大黒天。
でも、撮影禁止。なので、暗黒の向こうから駆け寄ってくる大黒天をイメージして下さいませ。
わらじ履きで大きな袋をかつぎ、水晶の目を台所の隅で光らせる、鎌倉時代の木像。
本当に走り出しそうな格好をしてて、なおかつ意外に小さいのが、妙な怪異さを呼んでます。


改めて別格の紅葉を鑑賞してから、帰ります。
そういえば、最近看板犬になりつつあるというハナの姿を見かけませんでした。
来たときには物凄い勢いの吠え声が聞こえてたんですが。うるさいから自宅待機してたんでしょうか。

客は、少ないです。ただ、貸切状態になるということもありません。
ひとつの部屋 or スペースに1グループが常時いる、ってくらいの入りでしょうか。
客層は、地元の檀家か茶関係の知り合いっぽい親子連れとか、
あとはおばちゃんグループ、中高年夫婦、孤独なおっさん、そんな感じ。
カップルや観光客丸出しっぽい人もおらず、山の外の音が気になるくらい、あたりは静寂。
かなり独男向きな感じの世界ですが、ただここ、女性の着物率が異常に高いです。
お茶の奉仕する着物女性が、客よりもたくさんいます。
例年こんな感じなのかどうかは知りませんが、貧乏独男はかなり場違い感を味わうかも知れません。

そんな雲龍院の夜間拝観。
好きな人と見たら、より別格なんでしょう。
でも、ひとりで見ても、別格です。

【客層】 (客層表記について)
カップル:0
女性グループ:1
男性グループ:0
混成グループ:0
修学旅行生:0
中高年夫婦:3
中高年女性グループ:1
中高年団体 or グループ:4
単身女性:0
単身男性:1
 (おっさん2+若い兄ちゃん1)
【ひとりに向いてる度】
★★★
色気のプレッシャーや観光ハイなどとは完全に無縁だが、
奥様方のお稽古ごとに紛れ込んだような
気まづさとアウェー感は、多大。

【条件】
火曜 18:30~19:30

 

雲龍院
京都府京都市東山区泉涌寺山内町36
通常拝観 9:00~17:00

京都市バス 泉涌寺道下車 徒歩約10分
京阪電車 or JR奈良線 東福寺駅下車
徒歩約17分

御寺泉涌寺別院 雲龍院 – 公式

雲龍院 – 御寺 泉涌寺

雲龍院 – Wikipedia