圓徳院の秋の夜間特別拝観へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2011年12月1日(木)


圓徳院の秋の夜間特別拝観へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

圓徳院
いわずと知れた高台寺塔頭であり、同寺を建立した北政所ねねの終焉の地です。
夫・豊臣秀吉の死後、ねねは京都で隠棲を始め、「高台院」の名にちなんだ高台寺の建立を発願。
秀吉好みのギンギラギン仕様だったという伏見城から資材を流用して伽藍を整備しつつ、
やはり伏見城より化粧御殿と庭園を山内へ移築、そこへ住み、そしてその生涯を終えました。
ねねの死後、ねねの兄・木下家定の次男・利房はこの場所を寺化することを思いつき、
寛永9年、木下家の菩提寺にして高台寺塔頭である圓徳院は創建されたわけです。
が、そんなことに興味があってここを訪れる人は、稀でしょう。
参道・ねねの道まで抱き込んだ形で、大幅な観光リニューアルが施された90年台以降、
わかりやすい観光客が大挙して押し寄せるドメジャースポットへ急成長した、高台寺&圓徳院。
最盛期の1/10にまで縮小した境内伽藍を復活させたいという寺の想いは、
開き直りを通り越して清々しさや悟りの境地さえ感じさせる、飽くなき集金への情熱と直結。
「和風テーマパーク」という呼称が皮肉ではなく単なる事実でしかない境内を生み出し、
毎年行われるライトアップには、悟りもひったくれもない客が大勢集まるようになりました。
派手な伽藍とビジュアルを持つ高台寺にその傾向がより顕著ですが、
高台寺より狭い圓徳院は、その由来から逆に「ねねの愛」といったものを積極的にアピール。
「何か和で、愛で、優しい感じ」という、よりカップルを吸い寄せがちな何かになっとるのであります。
そんな圓徳院の、ちょっと遅めな紅葉真っ盛りのライトアップ。
和の心を持たず、愛を知らず、優しくない独男は、入ることができるのでしょうか。


18時半ごろ、大して混んでないねねの道を歩き、圓徳院へ向かうの図。
それなりに人は歩いてますが、ふと無人になるときも。そういえばもう、12月なんですよね。
右の図は、観光ハイのバカ声がないねねの道へ奇声を轟かせてた、喧嘩中の野良猫。


やってきました、圓徳院・長屋門
寺でありながら門に侍長屋が併設されているという、圓徳院ならではのゲートです。
現在は侍でなく、受付のおばちゃんが待機。高台寺にも入れる3ヶ所共通券を購入しときます。
「愛を知らない奴には売らないよ!!」とか言ってくれると面白いんですが、すんなり買えました。


3ヶ所共通券は、圓徳院、高台寺、そして掌美術館に入れるというもの。
900円。バラで買うより、200円お得。それより、高台寺で並ばずに済むのが大きなメリットですが。
愛など要らぬわけではないけど、特に要るわけでもない独男が、くぐる唐門


唐門を抜けてしばらくしたところで現れる、ウェルカム手水鉢。
今川義元の親戚へ秀吉が贈り、のち圓徳院へ寄贈された、ウェルカムバック手水鉢でもあります。


秀吉好みのウェルカム手水鉢などを見ながら、方丈入口へ。
見事な紅葉が、門にかぶさってます。が、どうでもいいことながら、この日は風が強し。
見事な紅葉を見事に撮ろうとするも、揺れまくりで上手くいかず、粘りまくり。
そのうち、入口で靴袋持ってスタンバるおばちゃんの視線が気になり、諦めて中へ入るの図。


でもその前に、外からの南庭の眺めを拝んでおくの図。
造園史家・森蘊が指導、徳村宗悦の作、現在は庭師・北山安夫が監修する、昭和の庭。
う~ん、チャラい。観光モードとか、女性向けとかいうより、何か、チャラい。


方丈へ上がりこみ、改めて南庭を見るの図。
やっぱり、何か、チャラい。庭そのものがチャラいというより、照明が、チャラい。
もうちょっと光量が少ない方が、いい雰囲気出るんじゃないでしょうか。


アングルを変えて、もう一度見てみるの図。
さらに、チャラい。「光ってる」という感じよりも、はっきりと「光を当ててる」のが、わかってしまう。
客の回転は案外、早し。やはり何か、落ち着かないものを感じてるんでしょうか。
逆に、狭い境内の回転率を上げるためにわざとやってるなら、もう、ご立派。


渡り廊下から、ねねの道と石掘小路を結ぶねねの小径を見るの図。
渡り廊下、北庭のある北書院と方丈を繋いでるんですが、間に商業施設である京・洛市「ねね」あり。
中には「高台寺羽柴」といった食い物屋もあるためか、換気扇の音と匂いが爆裂状態。
これもまた、ねねの愛です、きっと。あ、右の図は、書院のウェルカム宗旦狐


方丈と北書院の中では、版画や武将の書簡やらを展示中。
どうでもいいことですが、建物の中は入口がいちいち低く、170cmの私でさえ頭を打ちました。
古い建物はどこもそんな感じではありますが、ここ、飛びぬけて低くないか?ねね仕様?


狭い部屋の展示では、何故か密集してくる若者、多し。
1~2人で見てるとスルーするが、3~4人になると寄り、それ以上になるともっと寄る、みたいな。
そんなアホの子を赦し導くのもまた、ねねの愛です、きっと。


展示物の階段を登ろうとして、防犯ベルを鳴らしてた馬鹿もいました。
「誰も上まで登ろうなんて思ってないやん。アホちゃう」と、連れの女に言ってました。
そんなアホの子に性の相手を配給するのもまた、ねねの愛です、きっと。


で、国指定名勝・圓徳院北庭でございます。
伏見城北政所化粧御殿の前庭が、ほぼそのままの形で残されているという庭。
大量の巨岩大岩が醸し出す桃山時代のワイルドネスが、ワイルドなライトアップがさらにブースト。
公式サイトいわく 「石組みの上に真っ赤な紅葉が炎のように広がります」 。確かに。


しかし、回転率は妙に早いんですよ。
さぞ燃えるような劣情を抱えた輩どもが、火に群がる原始人の如く押し寄せ、
床に根を生やして微動だにしないんだとと思ってたら、すぐに回転する。南庭より、早いかも。
狭い割に照明の量が多いため、明示的過ぎるんでしょうか。吸引力に欠ける、みたいな。


光量多目の庭の背後では、秀吉像、ねねの何ちゃらを、展示中。
庭の眩しさに疲れた者が目をとめ、秀吉の偉大さとそれを支えたねねの深き愛を知り、感動する・・・
ということは全くなく、ほとんどの客が展示品を一顧だにせず、お帰り口へ直行します。


私もじっくり座り込む気にはならず、早々に退去。
室町時代の宝塔の笠を利用してるという桧垣の手水鉢をチラ見してから、さいならであります。
どうでもいいことですが、圓徳院のこの渋過ぎるお帰り口、私は凄く好きです。


お帰り口を出たところには、さっき匂いだけ嗅いだ商業施設、京・洛市「ねね」
高台寺&圓徳院と共に整備され、先述の「羽柴」から土産物やギャラリーが入ってます。
ライトアップ時には、金なさそうな若いカップルや団体が、安い食い物へよく群がるスポットです。
平日だからか、入りはもうひとつ。酷い時は、バカップルが口移しでアイス食ったりしてるんですが。


京・洛市「ねね」の向かいには、秀吉の出世守本尊・三面大黒天
大黒天・毘沙門天・弁財天の三つの顔を持ち、一回拝めば三つの効能がある、お得な仏像です。
この夜は、何故かヒップホップなアジア人が記念写真を撮ってました。


帰り際、掌美術館に寄っていきます。
京・洛市「ねね」2階にあり、高台寺蒔絵で知られる高台寺の収蔵品などを展示する、ミニ美術館。
特に興味もないし、見たいものもありませんが、チケットあるので入っときました。
本当に小さいところですが、何故か若い女性で一杯。一分足らずで、脱出。


で、表のねねの道まではい出て来ました。
しんどい。体より心が、しんどい。「ねねの愛」は、なんて人を疲れさせるのでしょう。
しかし、疲れてる場合ではないのです。これから、本丸である高台寺へ向かうのです
戦争は、これからなのです

客層は、カップルと若い女性グループばかり。
若者主体であり、修学旅行生が体だけちょっと年食ったくらいのテイストでしょうか。
リアクション・行動様式も、観光というよりテーマパークのそれ。場全体の雰囲気も、そのまんま。
ただ、高台寺よりはスペクタクル度が圧倒的に下がる分、若干落ち着いてる感じはなくもありません。
色気のプレッシャーは、もちろん強め。
狭い境内に気圧されるのか、観光ハイと恋愛ハイを撒き散らすカップルはさほどいませんが、
狭いゆえに距離が近くなり、回避は困難です。同じ理由で、人圧のプレッシャーも、強め。
中高年の姿は少なく、単独も少なし。若干のカメラマンとおひとりさまがいたくらいでしょうか。
高台寺ほどではないですが、それなりの精神武装が必要なスポットと思われます。

そんな圓徳院の秋の夜間特別拝観。
好きな人と行けば、より紅葉なんでしょう。
でも、ひとりで行っても、紅葉です。


【客層】 (客層表記について)
カップル:4
女性グループ:3
男性グループ:0
混成グループ:若干
修学旅行生:0
中高年夫婦:1
中高年女性グループ:1
中高年団体 or グループ:1
単身女性:若干
単身男性:若干

【ひとりに向いてる度】
★★
色気、人圧、共にハイプレッシャー。
高台寺ほどではないが、なかなかの鬼門。

【条件】
平日金曜+紅葉盛り 18:30~19:15

圓徳院
京都府京都市東山区下河原町530
通常拝観 10:00~17:00

京都市バス 東山安井下車 徒歩約5分
京阪電車 清水四条駅下車 徒歩約16分
阪急電車 河原町駅下車 徒歩約18分

圓徳院 – 高台寺公式

圓徳院 – Wikipedia