宝厳院の秋の夜間特別拝観へ行ってきました。もちろん、ひとりで。
宝厳院の秋の夜間特別拝観へ行ってきました。もちろん、ひとりで。
東山に立つ禅刹・高台寺の、その和風テーマパークぶり。
特に春秋のライトアップとなれば、開基・北政所ねねの夫である豊臣秀吉の魂が、
下世話さのみを抽出して再生されたかの如く、境内は絢爛&ケバケバしき輝きが、溢れまくり。
人によっては 「商業主義」 「それでも禅寺か」 と眉を顰めるような世界が現出してしまうわけですが、
しかし、90年代の改装で生まれたこの輝きが、京都観光の夜の姿を変えたのもまた、事実。
多くの寺院が追随してライトアップを始め、光へ群がる虫の如きカップルどもを動員するようになり、
近年に庭園を整備した寺では、桜も紅葉も、照明で自在に出現させる所さえ現れました。
嵐山を代表する禅刹・天龍寺の塔頭であり、近年大堰川沿いへ移転した宝厳院も、そんな寺です。
室町時代に上京区で創建されたものの、応仁の乱で焼失+同じ天龍寺塔頭の弘源寺へ移転、
21世紀に入って、これまた天龍寺塔頭であった妙智院の跡地へ移転を果たした、宝厳院。
個人所有の別荘だった時代が続いた敷地には、別荘時代に作られた大正期の書院や、
妙智院時代の遺産である 「獅子吼の庭」 、現代数奇屋の新築本堂など、それなりに見所、多し。
ですが、この寺の一番の見所は何といっても 「高台寺以後」 を強く感じさせる照明でしょう。
12月を過ぎ、紅葉の大半が散ってもなお、庭園に 「紅葉」 がある気にさせる、照明。
やり過ぎを通り越して、「そもそも紅葉とは何だ」 と思わず根源的疑問さえ発したくなるその輝きは、
「存在しない紅葉を見る」 という、ある意味で枯山水にも似た禅的境地へと俗人を誘い、
さらには、電飾庭を枯山水の 「次」 の様式として確立せんとする試みなのかも知れません。
と、書いてる自分でさえ阿呆らし過ぎて呆れてしまう戯言はどうでもいいとして、
とにかくそんな宝厳院の秋の夜間拝観、完全に真冬ではありますが、行ってきました。
折りしも嵐山は、紅葉が枯れた山を電飾で照らす無理矢理集客策・嵐山花灯路を、開催中。
無意味に青く光る嵐山を借景として、幻覚の紅葉を楽しんでみたというわけです。
冬の嵯峨野を彩る禅のエレクトリカルパレード、とくと御覧下さい。
嵐山花灯路目当てらしき客で大混雑のJR嵯峨嵐山駅を出て、
大混雑の駅前を歩き、三条通でやっと人が減ったと思ったら、渡月橋がまた大混雑だったの図。
偶然居合わせて 「何かやってる!」 と大喜びする、頭がお子様な観光客、多し。歩くの、面倒です。
どうでもいいですが、嵐山の山照らし、年々光が弱くなってる気がするんだけど、気のせいかな。
「左側通行でお願いします」+「歩道へ上がって下さい」 を、
エンドレスで叫び続ける係員の声を聞きながら、前へ進むほど混む渡月橋を渡り、法輪寺へ。
法輪寺では、もはや嵐山花灯路名物となったデジタル掛軸ことDKLIVEを、今回もサイケに投影中。
CGが、法輪寺に似合う感じになってきてます。ただその分、ブッ飛んだ違和感も減ったような。
法輪寺を出て、舞妓さん撮影会を見かけないなと思いながら中ノ島公園を通り、
そういえば法輪寺展望台の展示もなかったようなと思いながら、また渡月橋を渡り、左岸へ。
嵐山の山照らし+川に写った逆さ山照らしの雄大なビジュアルを見ながら、宝厳寺へ向かうの図。
沿道の商店も商売っ気が希薄気味で、ガッついてるのは人力車の兄ちゃん連中ばかりです。
吉兆の前のちょこっと道が高くなるところへ入り、右へ曲がり、
カルタ屋敷・時雨殿とらんざんの間の道を進むと、左に現れるのが宝厳院でございます。
創建、1461年。入口の茅葺小屋が怒涛の渋さを煽りますが、先述の通り、ここへの移転は、最近。
大正期に建てられた日本郵船重役・林民雄の別荘が、ベース。で、右には枯れ切った、紅葉。
小屋の前には、枯れ切った紅葉と狛犬、
そして鳥取の金持が作ったとかいう、濃過ぎる顔つきをした大量の羅漢さんたち。
600円払って中へ入れば、モダンな行灯と、紅葉という名の枯木。
紅葉という名の枯木と落葉、そして蒼き山照らしを借景にした石の川。
恐らく本物だろうけど、正直確証が持てない、紅葉の残り葉。
枯木を借景として鎮座する、枯木の根っこ。
何かの塔と行灯、そして追加で金が要る本堂と抹茶。
色とりどりの枯木に囲まれた、永代供養の無礙光堂。
ホラーのように下からライトを浴びて威容を誇る、何ちゃら岩。
光る枯木の向こうに立つ、書院。
「とよまるがき」 ではなく 「ほうがんがき」 と、わざわざ但書が付く、豊丸垣。
獅子岩と枯木、そして闇夜に光るライト。
落葉の向こうの茶室、そして塀の隅っこでこちらを見つめる石像。
光る竹、木、そして小屋。
下から照らされた垣と光る枯木、そして藁葺小屋の下を通って退出。
禅の精神で幻覚の紅葉を眺めるエレクトリカルパレード、御堪能いただけたでしょうか。
藁葺小屋を出て、紅葉が完全に散り去った紅葉のトンネルをくぐり、
道の真ん中で右に宝厳院、左に羅漢さん達を見ながら、遠くの山照らしを改めて望むの図。
まだ20:20ですが、もう受付は締め切ってました。商売っ気あるのかないのか、よくわかりません。
「寒~っ」 と震える人力車兄ちゃん達と同じく、幻覚ではない寒さを感じつつ、帰りましたとさ。
客層は、カップルがメイン。
学生系などは少なめで、20~30代のカップルが多め。で、それ以外の全ての層が、少なめ。
花灯路シーズンらしい最悪な層と言えますが、客の数そのものはさほど多くありません。
道が狭いため、時おり人で埋まることはありますが、でもかわすことは簡単です。
また、観光モード全開というよりは、電車で大阪など近隣エリアから来た感じの人が多いというか。
なので、それほどハードなプレッシャーに苛まれることはないんじゃないでしょうか。
単独は、カメのオッサン以外は、あんまり見当たりませんでした。
そんな宝厳院の、秋の夜間特別拝観。
好きな人と行けば、よりエレクトリカルパレードなんでしょう。
でも、ひとりで行っても、エレクトリカルパレードです。
【客層】 (客層表記について) カップル:4 女性グループ:1 男性グループ:0 混成グループ:0 子供:0 中高年夫婦:2 中高年女性グループ:1 中高年団体 or グループ:1 単身女性:微 単身男性:1 |
【ひとりに向いてる度】 【条件】 |
宝厳院
京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町36
一般公開は春・秋の特別拝観のみ
嵐電 嵐山駅下車 徒歩約5分
JR嵯峨野線 嵯峨嵐山駅下車 徒歩約13分
阪急電車嵐山線 嵐山駅下車 徒歩約15分
宝厳院|京都永代供養・特別拝観 – 公式
宝厳院 – Wikipedia