山鉾を一切見ずに2013年の祇園祭・山鉾巡行を楽しんできました。もちろん、ひとりで。

2013年7月17日(水)


山鉾を一切見ずに祇園祭・山鉾巡行を楽しんできました。もちろん、ひとりで。

菊地成孔+大谷能生 『M/D マイルス・デューイ・デイヴィスIII世研究』 では、
マイルスの最高傑作である 『Kind Of Blue』 について、一切言及がなされてません。
アーティスト研究を行う上で、外すことが絶対出来ない作品を、敢えて空白にするという、暴挙。
そして、対象の中心を隠蔽するその暴挙が、対象の本質をより浮かび上がらせるという、マジック。
よくわからんけど、そういうの、何か格好いい。よくわからんけど、そういうの、やってみたい。
という高踏極まる動機から、2013年の山鉾巡行追尾は、山鉾をほぼ一切見ずにやってみました。
祇園祭の顔、いや、京都観光のアイコンとも言える山鉾巡行の中心を、敢えて隠蔽する。
その暴挙により、京都観光、いや、京都そのものの本質を、浮かび上がせてみようと思うのです。
いやあ、格好いい。こんなことを思いついた俺、実に格好いい。うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ。
えと、いや、あの、山鉾隠蔽には他にも一応、動機があります。後祭の復興が、そうであります。
観光集客力アップ+交通規制日削減+仕事止まるの堪忍しとくれやすなどの理由から、
元来は17日前祭+24日後祭の2回開催だった山鉾巡行が17日に一本化されたのは、昭和41年。
以来、巡行が持つ信仰の空洞化&周囲の馬鹿騒ぎ化は果てしなく進行したわけですが、
そんな高度経済成長期的アホアホメタボリズムを捨て、2014年、後祭が復活するのであります。
それは、当事者である山鉾町の人たちにとっては当然、悲願の旧儀復興となるのでしょう。
が、私のような外野の人間からすると、「昭和の無形遺産が消える」 という印象がしなくもありません。
馬鹿のような暑さの中で、馬鹿のような混雑の中を歩き回り、巡行後半は客の大半が半死半生。
そんな 「昭和」 な馬鹿騒ぎが、消えるかも知れない。そう思うと、少し寂しくなったのです。
という意味不明な感傷+先述の中二病+おまけに当日の天気も今イチで写真が撮りにくいため、
思い切って山鉾には目を向けず、肥大化の末に消えていく外縁ばかりを見つめてみました。
やはりマイルスのアルバム 『In A Silent Way』 の 「Shhh/Peaceful」 において、
テーマを全カットした編集が音響の新しい地平を開いたようなマジックが、ここでも起こるのか。
それとも、ただ単に 「肉抜きの牛丼」 みたいなもんに成り果てるだけで、終わるのか。
中心を隠すことで浮かび上がった本質、その目でお確かめ下さい。


山鉾巡行当日、8:40頃の京阪電車祇園四条駅。混雑、割と普通です。
駅出口の階段には、「祇園祭」 という案内看板あり。あと、その横で、山鉾の絵も飾ってます。
が、平日ゆえか、それ風の客は多くありません。数はそれなりですが、宵山の比ではありません。
車内の雰囲気も、ごく普通の朝に近いもの。観光丸出しの輩は、さほど見かけませんでした。


でも「、四条大橋を渡り四条河原町へ向かうと、やはり人間の壁は出来てたの図。
バズーカ完備の報道は、小高くなった木屋町通交差点寄りの辺りで、列になってカメラをセット。
一般者は、その20mほど前方へ密集して、辻回しが拝めるのを太陽に焼かれながら待ち続けます。
この位置&時間は、完全に順光。撮影には有り難いですが、東向の長刀鉾稚児はきっと、地獄。


白粉の上からでも顔面を焼かれてるであろう長刀鉾の稚児が、9:20、注連縄を切断。
現場へ行くと山鉾が丸見えになるので、敢えて200m先の四条河原町から携帯で確認したの図。
放送局はもちろん、KBS京都です。この日の中継のためだけに存続してるような局、KBS京都です。
稚児が縄を切った瞬間のカメラの引きこそ、京の匠の技です。職人の魂です。千年の伝統です。


それでは外縁めぐり始めましょうか。面倒臭いので、文章も大幅カットします。
空白から滲み出る本質を、写真の羅列から感じて下さい。まずは本質溢れる四条通の大混雑。


本質が溢れかえってる、四条通の大混雑、もう一発。


道は混んでるのに、群衆から鬼のように無視されてる、御旅所。


暴徒を恐れ、巡行中はシャッターを下ろす、四条通の大半の店。


でもそんな混雑の下で、だだっ広さが普段以上に際立ってる、阪急地下道。


でも上に出ると、地平からビルの上までやっぱり大混雑の、四条通。


と、ざっと四条通をまわってから、朝食を食ってないのでサンマルクへ入りました。
で、2階でチョコクロとアイスコーヒーを食らってると、どっかの山の真木がチラッと見えたの図。
鉾なら完全に見える席ですが、山鉾見物目当ての客はあんまりいません。というか、全然いません。
窓際は、私とスーツの兄ちゃん以外、空き。兄ちゃん、外を見ることなく、タブレットをいじるのみ。


サンマルクを出て、異常なくらい普段通りの寺町通を通ると、何か写ったの図。


やはり寺町通で、交通規制のため警官に制止されているタクシーの図。


巡行ルートはバスも通れないため、四条河原町で引き返す市バスの図。


その四条河原町で、 「立ち止まらないで下さい」 コールの中、辻回しを見る人民。


実際には立ち止まることも歩くこともできない混雑の中、辻回しを見る人民。


毎年通るたびに、暑さで熱死するかもと恐怖する混雑でも、恐れず密集する人民。


そんな暑さで倒れたり or 熱死した人のために、OPAには応急救護所。


死にたくはないので、混雑を避け木屋町へ入ると、 『祇園祭だよ全員集合!!』 。


さらに人間を避け、祭の気配がない静かなエロゾーンへ入ると、『エキサイト』 。


性欲を刺激されると、食欲も刺激されたので、営業してたサイゼリアへ入店。
ちょこっと書きましたが、開いてる店jは、あまりありません。そもそも、時間がまだ11時前ですし。
ここも、入ったのが10:50で、11時までオーダー取らないというので、しばし無為に待たされました。
窓際は埋まってるだろうと思ったら、通されたのは普通に、窓際。で、窓の外には普通に、山鉾。


写ってるじゃないか。見えてるじゃないか。という話ですが、景色ですよ、景色。
隣にはどっかの鉾町の身内が座ってて、手を振ると、囃子方たちもそれに応えたりしてます。
とはいえ他の客は、熱狂的に騒ぐこともなく、立ち上がって鉾を見る程度。山だと、立ちもしません。
私も、山鉾見ないルールに従い、座ったままでオーダーしたパスタ何ちゃらを食うこと、しばし。


で、燃料を補給したら、徘徊再開。売店がちょっとだけ並ぶ河原町通を歩く。


売店は、ジュース・かき氷などがメイン。写真は売店ではなく、町内会のテント。


商売っ気があるのは、概ねチェーン系。三条のかに道楽も、浴衣姉ちゃんが呼び込み中。


いや、この時間は地元の店も開いてる所が、増加。寺町通の小松屋は、厄除ちまき販売中。


御池通地下のゼストでは、こちらも例年通りですが、土産物産市を開催中。
ゼスト、外の直射日光からとりあえず緊急避難できる場所として、やはり例年通り賑わってます。
タダの椅子席があるんですが、そこへ呆然自失で座りこむ人たちの様、いろんな意味で、壮絶です。
割ときれいなトイレがあるのも、ナイス。しかし、当然というか何というか、女子トイレは長蛇の列。


で、正午になると、御池通の風物詩・トンズラ客によるガラ空き観覧席、大量発生。
来年からこれが見れなくなるのかと思うと寂しい、というのは全くの嘘ですが、それにしても酷い。
そういえば、最初に見たKBS京都の巡行中継も、11:55まで。後祭列へのフォローは、なし。酷い。
ちなみに、この日の正午からKBSが放送されてたのは、杉良太郎 『新五捕物帖』 。酷い。


観覧席で観覧してたツアー団体の方々は、正午を目処に帰るところが多いようです。
後祭列はまだ御池通に到着さえしてませんが、知ったことではないのでしょう。とにかく、暑いし。
やはり死にかけてるツアコンに引率され、御池通を渡り、どっかに停められたバスへ向かう人民の図。
満員&長蛇の列に業を煮やし、男子用臨時トイレで用を足す妙齢女性、多数発生してます。


人間がバテてトンズラするくらいなので、全身毛だらけの犬は完全にバテてるの図。


私もバテ気味なので、投げ売り中の住民系屋台で、かき氷100円を食うの図。


かなりダレてる曳き手を横目に、こちらもダレダレで烏丸御池交差点を渡るの図。


御池新町周辺では、さらに空気がダレて、ママチャリ観賞がもはや普通になじんでるの図。


ダレダレのまま、御池通から山鉾町へ。すると、ダレた空気が一気になくなります。
山鉾に対する温度感が、違うというか。わかりやすい馬鹿騒ぎはないですが、間違いなく、熱い。
露店や特売はありますが、ちりめん山椒・布地・下駄・たまにビールを売ってる程度で、基本、地味。
営業のためというより、あくまで、祭の賑わいの一環、行事の一環としてやってるテイストです。


観光客に、山鉾への愛情をさりげなくかつ丁寧に語ってる店も、見かけたりしました。
河原町周辺では祭が 「迷惑なもの」 「関係ないもの」 「利用するもの」 であるのと、対照的です。
山鉾は、当たり前だけど山鉾町のものなんだな。この辺は、山鉾を写さなくても、祭の中心なんだな。
そう思い、所期の目的たる対象の中心隠蔽のため、山鉾町を脱出。再び、外縁へ向かいます。


で、また外縁たる御池通へ戻ってみると、完全にもぬけの殻になってた、観覧席。


もぬけの殻どころか、きれいさっぱり片付けられ、背後を嬉しそうに車が走る、観覧席。


そして、路上へ捨てられた、大量の氷。14時半、山鉾巡行、終了であります。
山鉾を見ないことで、本質、浮かび上がったでしょうか。編集のマジック、発生したでしょうか。
私にはやはり、肉抜きの牛丼としか思えませんが。ただ、玉ネギだけでも、腹はかなり膨れたけど。
膨張し、そして捨てられるかも知れない玉ネギを想いながら、2013年の変な追尾、終了です。

客層は、例年通りです。
一般観光客とツアー客が混合した、ベタな中高年観光客が、メイン。
地元テイストは希薄で、近隣テイストも比較的薄め。全くもって、ベタな観光客という。
若者は、全体の半分もいきません。昼を過ぎたあたりから若干増えますが、それでも、少なし。
カップルも多くなく、色気のプレッシャーも希薄。その手の輩は、宵山終わりでまだ寝てるんでしょう。
混成グループは、外人観光客が多し。中国人も多いが、西洋系も同じくらい多し。
単独は、女は普通の観光風が微量、男はカメおやじと普通に独な若い奴。
追尾にあたっての敵は、やはり暑さ&自分自身という感じでしょうか。

そんな祇園祭の山鉾巡行。
好きな人と観たら、より祇園会なんでしょう。
でも、ひとりで観ても、祇園会です。

2012年の祇園祭・山鉾巡行へ行ってきました。もちろん、ひとりで。【前篇】
2012年の祇園祭・山鉾巡行へ行ってきました。もちろん、ひとりで。【後篇】
祇園祭の山鉾巡行へ行ってきました。もちろん、ひとりで。 (2011年)

【客層】 (客層表記について)
カップル:1
女性グループ:1
男性グループ:若干
混成グループ:2(外人観光客多数)
子供:0
中高年夫婦:1
中高年女性グループ:1
中高年団体 or グループ:4
単身女性:微
単身男性:若干

【ひとりに向いてる度】
★★
山鉾を見ようが見まいが関係なく、
結局は暑さ、そして自分との戦いになる。
山鉾に近づかないことで人圧は多少緩和されるが、
情報をたかるアホが何故かよく寄って来るので、鬱陶しい。
暑さや空腹、トイレなどで休憩したい時は、
情緒を捨ててファミレスへ入ることを薦めておく。

【条件】
平日水曜 8:40~14:50


祇園祭 山鉾巡行
例年 7月17日 開催
(2014年より、17日前祭+24日後祭開催)

市営地下鉄四条駅 or 烏丸御池駅
or 京都市役所前駅 下車
あるいは阪急烏丸駅 or 河原町駅 下車
もしくは京阪祇園四条駅 下車

人間だらけで近づけそうにないところへ、
無理矢理押し込んでいけば、
たぶん何かに辿り着く

祇園祭 – 祇園祭山鉾連合会 公式

祇園祭 – 京都市観光協会

山鉾案内マップ – 京都新聞

祇園祭・山鉾巡行 – Wikipedia