鍵善良房でくづ切りを、八坂神社・夏越祓の帰りに食べてきました。もちろん、ひとりで。

2014年7月31日(木)


鍵善良房でくづ切りを、八坂神社・夏越祓の帰りに食べてきました。もちろん、ひとりで。

京都の夏といえば、くづ切りと決まってます。
「誰が決めた」 と問われたら、私が決めました。今、ここで、決めました。
「くづ切りなんかどこでも食えるだろ。それに近畿圏で葛といえば吉野に決まってるだろ」
などという訳知り顔の正論は、人々の勝手な幻想がふき溜るこの街では、何の効力も持ちません。
そう、ここは、京都。 「京都といえば」 が枕詞なら、どんな出鱈目も通ってしまう魔都、京都。
「京都の夏といえば、かき氷」 程度は無論、 「京都の夏といえば、すき焼き」 でも案外平気で通り、
「やっぱり」 や 「あえて」 も使えば、安易なブランディングが無限に成立する、魔都なのです。
言い切れば、何であろうと真実になります。それが貴方の、真実の京都なのであります。
無論、その真実は、貴方自身のことでもあります。京都を語ることは、常に己を語ることであります。
「京都といえば、パン」 「京都といえば、ケーキ」 「京都といえば、チョコレート」、全部、OKです。
それが、貴方の京都なんだから。それが、貴方自身なんだから。しょうがないですよね。
という感じで、得体の知れぬスイーツが我が物顔で 「京都」 を名乗る昨今の動勢を考慮すれば、
私がくづ切りを 「京都の夏の風物詩」 と勝手に断言した所で、多分、どこからも文句は出ないはず。
それに、紫紅社 『きょうの京都』 においても、さらには淡交社 『京都歳時記』 においても、
くづ切りは 「八月」 の項に 「夏の風物詩」 「夏に食うもの」として、しっかり掲載されてますしね。
なので、京都の夏といえば、くづ切りであります。しょうがないことなく、くづ切りであります。
そんな京都のくづ切りといえば、祇園・四条通の鍵善良房が、最も有名ということになるでしょうか。
ランチジャーみたいな箱に入ったくづ切りは、誰もが一度は見たことがあるかも知れません。
その鍵善良房へ、混迷を極める京都のスイーツシーンの今後を見据えるべく出かけた、
というのはもちろん大嘘で、実は八坂神社夏越祓の帰りに何となく寄っただけなんですけど。
フラっと食したくづ切りの涼しさ、夏越祓の雑なレポと共にお楽しみ下さい。


四条駅を出て、8月公演の看板が上がる南座を横目で見ながら、祇園を歩くこと、しばし。
混雑は、祇園祭後ゆえか、まあまあという感じ。ややマシ、と言ってもいいレベルかも知れません。
歩いてるのは、写ってないけど中国人が大多数。全体の6~7割が、中国人団体じゃないでしょうか。
花見小路は日本人が増えますが、四条通は中国人天国。中国語で絶叫してるツアコンもいたり。


で、到着したのは、一ヶ月に渡る祇園祭の正式最終日を迎えた、八坂神社・西楼門。
境内は特に千秋楽的な雰囲気が漂うということもなく、いるのも普段通りに中国人+外人ばかり。
夏越祓が行われる西楼門すぐ傍の疫神社前には、例年通り茅の輪+祈祷テントが建ってましたが、
中国人+外人は茅の輪に関心を示さず、くぐったり祈祷を受けたりするのはネイティブ系が大半。


茅の輪をくぐってから本殿の裏へ行くと、ギオンマモリ aka ムクゲがひっそり開花中。
2012年記事では 「無垢夏」 「霧公家」 「剥く毛」 とか書きましたが、怒らずに咲いてくれてます。
八坂神社では神前への御献花にも用いられるムクゲ、社務所前ではやはり例年通り、苗を販売中。
爆買い騒ぎを起こしてる中国人も、この苗には興味が無いようです。私も実は、ありませんけど。


で、くぐるもんをくぐって見るもんも見たので、神社を退社。鍵善良房へ行きますよ。
途中、吊られた茅の輪の写真を撮ると、後の中国人が訳もわからず真似して写真を撮りました。
店先に立つ人形を撮ると、後の中国人、今度は 「我が意を得たり」 といった顔をしながら撮りました。
この中国人、ひょっとして鍵善良房まで付いて来たりするのかなあ。行くの、止めようかなあ。


とか思いながら鍵善良房に着くと、店先に面白げな提灯が掛けられてました。
中国人、もう絶対付いてくる。と思ったら、この提灯だけ撮ってどっかへ行きました。どういうんだ。
なかなかの面構えの鍵善良房。江戸の享保年間より300年近く続く、紛れもない老舗でございます。
といっても、くづ切りで名が売れたのは戦後だそうですが。それ以前は、普通に菓子屋だったとか。


店の前のガス灯には、くづ切りと共に、それ以前jからの名物 「菊寿糖」 の名もあり。
「菊寿糖」 とは、菊の露を飲んで不老不死になった菊慈童の話に因んだという、菊花形の干菓子。
瓦紋も示す通り、元は花街・祇園の寺社・料理屋などに京菓子を配達する菓子屋だったわけですね。
人気のくづ切りを店先でも出し始め、昭和中頃には 「鍵善といえば、くづ切り」 な感じになったとか。


「めっちゃ高価そう」 と敬遠する若者を背にして、偽リッチマンの私は堂々と店内へ。
実は自動ドアの玄関を通り、 「菊寿糖」 などを販売してる本業テイスト漂う物販コーナーを抜けて、
一段高くなっている茶房ルームへ入り、たまたま空いてた坪庭手前のテーブルに陣取ったったの図。
ウェルカム茶菓子は、もちろん 「菊寿糖」 。 「菊寿糖」 の名も入る鍵善お手ふきと共にお出迎え。


オーダーしたのは無論、くづ切り。お代は、950円。実は、そんなに高価くないのです。
で、 「菊寿糖」 と冷茶を瞬殺し、おかわり冷茶も瞬殺した頃にやって来た、ジャー方式のくづ切り。
遊び人の若旦那がどうたらこうたらとかいう由来があったと思う、花街の艶気香るジャーであります。
給仕の女の子が食い方など軽く説明してくれるのを聞いてから、ではジャー、開けてみましょうか。


ジャーの中は、正しくジャー構造になってて、くづ切りと蜜が段重ねで格納されてます。
上には、蜜。下には、氷水に浸したくづ切り。で、一般的には、くづ切りを蜜につけて食うわけです。
私は昔、蜜を氷水へ入れたことがありますが。その時は、食い始めた途端、隣席の女が帰りました。
あ、蜜は選択制。黒蜜と白蜜で、好きな方をチョイス。で、私は黒蜜。では、早速頂きましょうか。


くづ切りを、掬って、食うべし。


蜜につけて、食うべし。


食ってる途中、奥の坪庭&庫も、ちょいちょい見るべし。


改めて、くづ切りを、掬って、食うべし。


蜜につけて、食うべし。


で、あっという間に食い終わりました。味は、まあ、くづ切りの味という感じでしょうか。
黒蜜が残りましたが、勿体無いのでズルルルルルルルルとし、完飲。美味い。濃いけど、美味い。
原液で飲むのが難しい方は、くづ切りの氷水を投入し水割りと洒落込むのもいいかも知れませんが、
隣の席の女 or 同行の女 or 同調圧力に弱い男から、白蜜より白い目で見られても、知りません。


で、蜜を丸呑みしたためか喉が渇き、おうす565円も頼んでしまったの図。


勢いで頼んだものの、冷たいもんを食った後のおうすは案外美味いの図。


で、おうすも飲み切り、店名入りナプキンで口を拭きながら余韻に浸ること、しばし。
あ、余韻に浸りながら熟視したわけではないですが、ここの店員の女の子は皆、可愛いですよ。
というか、もう制服からして既に、可愛い。私立校中等部 or 初等部感が濃厚に漂う制服で、可愛い。
もちろん中身も凄く、可愛い。明らかにある種の好みに基づいて揃えられた感じがして、可愛い。


そんな女の子が 「相席よろしいでしょうか」 と声掛けしてるので、さっさと帰ります。
勘定は、くづ切り+おうす = 1480円。レジの子もやっぱり、可愛い。特定の好み的に、可愛い。
店を出てから、玄関の面白い提灯を改めて撮ったりしてると、中国人の女が前面へ突っ込んできて、
その場でスマホをゴソゴソのんびり取り出し、記念写真を撮って、そのまま帰っていきましたとさ。

割と広めの店内は、8割ぐらいの入り。
客のメインは、中年女性のグループです。といっても、団体はなく2~3人程度。
そこそこの格好をしてる人、多し。ただし、観光系というより地元&移住系が、多し。
そこに、やはり中高年の雑多なグループ、商用リーマン、地方出身のボンボン学生系、
あとネイティブな普通な中高年と、ベタな観光客が若干混ざるという感じ。
若者率は極めて、低し。層を問わず、少なし。外には大量にいる中国人も、全然いません。
単独は、若年女性がちょっといる程度。男は、私ひとりだけでした。

そんな鍵善良房の、くづ切り。
好きな人と食べたら、よりくづ切りなんでしょう。
でも、ひとりで食べても、くづ切りです。

【客層】 (客層表記について)
カップル:0
女性グループ:1
男性グループ:1
混成グループ:0
修学旅行生:0
中高年夫婦:1
中高年女性グループ:4
中高年団体 or グループ:3
単身女性:1
単身男性:若干 (私ひとり)
【ひとりに向いてる度】
★★★
門構えほどのプレッシャーは、なし。
ただ、だからといって、全然気楽というほどでもない。
が、よっぽど汚い格好でもしてないかぎり、
特に浮くことは多分ないと思う。

【条件】
平日 13:45~14:15


鍵善良房
京都市東山区祇園町北側264
9:00~18:00 月曜定休

京阪電車 祇園四条駅下車 徒歩約4分
阪急電車 河原町駅下車 徒歩約7分
京都市バス 京阪四条 or 祇園下車 徒歩約3分
 

鍵善良房 – 公式

鍵善良房 – Wikipedia

鍵善良房 本店 – 食べログ